八事の閑静な住宅街から、奥ゆかしくも、魅惑的に、私たちの眼と気を惹きつけ、招いているような白いゲートがありました。近づくと、"Brasserie Bourgogne YAGOTO"の文字。先月、オープンしたばかりのレストランです。アプローチの階段を上ったエントランスには、驚きの空間が広がりました。ゆるやかなカーヴの回廊に沿って並んだワインのボトルたちに案内されて進むと、フランス語でかかれた「今夜は満席。エクスキュゼ モア。店主」の看板の扉。さらに、店内のアーチ型の飾りドアを抜けて、席に着く頃には、すっかり、ブルゴーニュに いざなわれた旅の気分です。
「ブラッセリー ブルゴーニュ」は、オーナー・シェフでソムリエの神倉仁司さんが、ジャンルにとらわれない新しい料理に挑戦する、自称"八事の食堂"です。チーズ・プロフェッショナルの資格をもつ奥さまの明子さん(G40)が経営される「ブーランジェリー ブルゴーニュ」同様、パンとワインとチーズのマリアージュが、コンセプトです。
8年前、名古屋の八事にオープンした「ブーランジェリー ブルゴーニュ」は、「南山タウンぶらぶら」(2006年5月号)でも、ご紹介したとおりですが、今や、名古屋でも屈指の「天然酵母の美味しいパン屋さん」と、知る人ぞ知る名店になりました。
「ブラッセリー ブルゴーニュ」誕生のわけ・・
新婚時代、パリの名門「オテル・リッツ」で、MFO(最優秀料理人の称号)に、料理を学んだ神倉さん夫妻は、帰国後、神倉さんのご両親が経営されていらっしゃった「チェンバロ」で修行を積むことになります。
標高1100メートルの清涼な空気、チェンバロ奏でるバロック音楽が流れるレストラン「チェンバロ」で、素材にこだわって供される自家製ケーキや高原野菜のキッシュ。ご両親と神倉さん夫妻の4人で働いたこの時代の経験と、今は亡きお父さまへの憧れが、今も、おふたりの"夢の原点"だと、明子さんは明かしてくださいました。
その原点に立ちもどりつつ、「ブラッセリー ブルゴーニュ」は、この6月8日、八事にオープンの結実を迎えました。でも、なぜ、八事なのでしょう? おふたりは、異口同音に、その訳を"感謝"の二文字に込めました。
「ブーランジェリーをオープンさせたとき、パンが美味しいと言いながら、地元のみなさんが、可哀想だと、度々、差し入れを持ってきてくださいました。開店当時、4ヶ月だった娘を1歳になるまで、おんぶして、お店にでていましたから、小さい子を抱えて、大変だと思ってくださったのです。同じ頑張るのなら、地元・八事でと思いました」。
明子さんも、「義父が亡くなる前、毎週、長野まで車を走らせ父を見舞い、翌朝3時には、名古屋に戻るという生活をしていました。経済的にも、それができたのは、パン屋を支えてくださった地元の皆さまのお陰だったと思えるのです。家族のようにお付き合いさせていただいた、ご近所の皆さまの温かい心にご恩返ししたいという思いだったのです」と。
「ブラッセリー ブルゴーニュ」のお料理の秘密・・
では、神倉さんの目指される「ジャンルを問わない新しい発想の料理」とは、どんなお料理なのでしょうか?
「それは、敢えて言うのなら、"EU料理"ですね。 カジュアルだけど、八事のハイ・グレードな皆さんの、"ちょっとオシャレな大衆食堂"として、ヨーロッパ料理と新たな発見を、提供していきたい」。
それは、この優雅な"トラベル・スリップ"できる回廊を持つ、お店の構造や趣にも表われているようです。「ひとつのホールにすれば、大人数の立食パーティーもできる空間になるのでしょう。けれど、入り口から見えることなく、座ったときに、ホッと寛げる"家庭の居間"のような場所にしたいと願う店主のデザインなのです」と、明子さん。
安らげるのは、雰囲気のみならず、厳選された素材にも、証明されています。塩、タマゴ、オリーブ・オイルにもこだわった自家製手打ちパスタは、「ブーランジェリー」のパンたちと同じ、北海道江別産の製粉「はるゆかた」から生まれます。これぞ本当の「姉妹店!」・・
この夜のコース・メニューの一部をご紹介いたしましょう。
(左)「すずきのカルパッチョ」 (右)「ボンゴレとバジルのフェトチーネ 」
L' ami de fromage その名も「チーズの友」と名づけられた「ブーランジェリー ブルゴーニュ」のナッツ入りパン。フルーティーなオリーブ・オイルと共に。
「牛肉の赤ワイン煮」・・マッシュ・ド・ポテトとのミルフィーユ仕立て。「ブルゴーニュのボーヌで食べた味が忘れられなくて・・」と神倉さん。
★ ウオッシュチーズ「エポワス」(ブルゴーニュ)
★ブルーチーズ「ロックフォール」(ミディ ピレネー)
★ 山羊チーズ「サントモール・ド・トゥーレーヌ」
「メレンゲ・アイス エスプレッソ風味」
2時間かけて焼き上げたメレンゲは、メレンゲの常識をくつがえす。イタリアン・デザートの「アフォガード」にヒントを得たという、お父さま秘伝「チェンバロ」の人気メニューを再現。大ブームの予感!
オープンからまだ1週間と経たない、取材のこの夜、満席どころか、お席の2倍の予約をお断りしてしまったのだとか。「ブーランジェリー ブルゴーニュ」誕生から8年で築いた、パンの美味しさの定評と、マリアージュ提唱の実績が、何よりの宣伝効果につながって・・お子さま連れや、国籍をこえたカップルや、ワイングラスを傾けるご夫婦が、楽しそうに語らう声で溢れていました。
名古屋に、また、ひとつ、予約の取りにくいレストランが誕生したようです。
みなさまも、是非一度、この"トラベル・スリップ"の回廊を渡って、パンとワインとチーズのマリアージュで愉しむ「ブラッセリー ブルゴーニュ」の味を堪能してみてはいかがでしょうか。
(取材 文:塩野崎 写真:吉田)







