JR中央線と名古屋高速3号線がクロスする「鶴舞」交差点に、「医療法人・横山胃腸科」はあります。名古屋人なら、誰しも、鶴舞公園前に建つ茶色いタイル張りの6階建ての病院に見おぼえがあるのではないでしょうか。1908年(明治44年)の創立以来、4代にわたって胃腸科疾患の第1線で治療にあたってこられた日本の草分け的な「胃腸専門」病院です。
JR鶴舞駅から徒歩5分、地下鉄鶴舞駅から2分の西南角 荒木浩子さんG27
実績と地の利から中央線沿線の東濃地方からも受診者は多い
お尋ねしたのは、外来時間を過ぎた午後2時、病院レセプトの窓口も閉まって、午前の慌しい時がウソのように静かです。昨今の病院の傾向ですが、あまり病院臭くなく、何かホテルのロビーのような雰囲気です。会議室に案内され、理事長の横山泰久先生と、ご長女で理事の荒木浩子さん(G27)、事務長の妙圓薗さんにお話を伺いました。
荒木さんの叔父さまが副理事、弟さんが現院長を務められ、荒木さんは、現在、東京の渋谷にお住まいですが、理事として月に一度、ご実家の病院に出向かれ、病院のPRとカスタマー(患者)サービスのお仕事に携わっておられます。2代目院長夫人、現理事長夫人で荒木さんのお母さまの三保子さん、現院長夫人も、代々、病院の事務などを担当され、まさにご一族総出の病院経営、なるほど家庭的な雰囲気がいたるところで感じられます。先々代からの患者さんを、先々代からのスタッフが看ることもあるというのも特筆すべき点でしょう。
103年にわたる「胃腸疾患治療」への貢献
まず、理事長より病院の沿革を伺いました。設立は明治41年、今の中区下前津である飴屋町に、初代・横山一格院長が開業されましたが、昭和12年の支那事変で、2代目の秀吉院長が3度の出征。その間に、空襲で病院は焼失。終戦時、焼け野原の名古屋から三重に疎開して、菰野に仮診療所を開設されます。当時は、腸チフス・赤痢・疫痢が、胃腸疾患のほとんどだったそうです。
昭和26年に、再び、名古屋で病院を再建することになった所以は、当時、院内の給食も担当し手作りされていたという「横山胃腸科」の"God Mother"の異名をもつ2代目院長夫人が、「夢の中で、お告げをうけたから」という秘話もご披露いただきました。その結果、この鶴舞(中区千代田)に、「横山胃腸科」が誕生したわけですが、その名を、全国有数の胃腸科専門病院に高めたのは、昭和30年代、胃潰瘍の外科的治療、つまり、「手術で切って治癒」させる症例数の多さにありました。愛知県がんセンターの創設前でもあり、3代目院長が手がけた胃・十二指腸の手術臨床例は、この地方で抜きんでており、昭和40年代には、早期胃がんの分類も、年間1000件にも及び、東京の癌研究会付属病院に次ぐものだったそうです。
昭和57年以降、薬剤の進歩によって、潰瘍はクスリで治る傾向にあり、早期がんも内視鏡による切除で、手術の役割も減っていますが、医療の進歩に伴い、今や胃がん・大腸がんなど、早期発見であれば、90%以上の治癒率の時代です。自覚症状が出る前に、検査で早期に病巣を発見し、叩くこと、それに尽きるわけです。
「検診」の多様さと、「術後」「治癒」までのトータルケア
「横山胃腸科病院」の特長は、国公立の病院とは異なり、内科と外科を分け隔てることなく、胃腸病の専門治療としてトータルな治療を受けることが可能なことにあり、また、「検診」で、他院と異なるのは、「予約なし」で、胃の内視鏡などの検査がすぐに受けられることです。もちろん、内視鏡の検査などは、食事をした後、すぐと言うわけにはいきませんが、胃の中が空っぽの状態であれば、即日検査が受けられるということです。超音波など他の検査も同様で、お忙しい患者さんの要望に速やかに応えてくれるシステムです。
検診専門の病院との違いは、一般検診後、異常が見つかった際、引き続き、必要となる2次の精密検査を受診できる点です。異常がわかった患者さんにとって、時を待たずしての治療開始は、まさに、一命をとりとめることにも繋がり、と同時に、それは、心的不安を大きく取りのぞいてくれることにもなります。
近頃では、マス・メディアで著名人の胃がんによる訃報が流れると、検診患者さんが増えるそうです。最低でも、一年に一度の検診が必要とのこと。フクシマの放射能問題以来、被曝を案じて、レントゲンより、内視鏡を望む患者さんもあるようです。最近では、内視鏡による鼻からの施術や、ご希望に応じて、麻酔下での検査も可能だそうです。あまり怖がらずに、先生にご相談するのがよさそうです。
絵がご趣味のお母さまと、日展入賞歴のお祖母さまの色鮮やかな日本画が飾られています
これらは院内の有効なアメニティとなって患者さんの心を和ませています
近年は、「最先端難病」の診療と「かかりつけ医」としての地域医療の双方で・・
4代目・横山正 現院長のご専門は、特定疾患(難病)に指定されている「潰瘍性大腸炎」・「クローン病」の診療ですが、欧米型の肉食生活によって、日本でも増加してきたこれらの新たな胃腸疾患に対しても、常に最前線の治療を目指しておられる一方で、「横山胃腸科病院」は、「かかりつけ医」として、厚生労働省に定められた国公立の各拠点病院の急性期の治療を終えた患者さんたちの、慢性期の治癒過程の病院として、地域医療に貢献しておられます。それは、初代院長が内科医だったことに「原点」があるのでしょうか。投薬も「院内外処方」(院内4割×院外6割)で、代々秘伝の整腸剤の丸薬は、21世紀となり、ついに姿を消しましたが、伝統の散薬(粉薬)は即効性が特長で、今でも愛好者が絶えません。
まさに、そこに、「横山胃腸科病院」の 『おなか、元気ですか?』 の医療理念を実感することができます。
ご実家の病院運営に関わったワケ・・
荒木さんのお仕事は、病院の「PR」と、「カスタマー・サービス」ですが、来院&入院患者さんから、さまざな声を聞き、病院運営に活かすのが、その主な役割です。院内環境を守るため、設備や施設の充実を図るのはもちろんのことですが、患者さんの人格や意志を尊重し、必要があれば、患者さんの意向を医師に伝え、円滑なコミュニケーションのために、患者さんやご家族の心の不安にも寄り添えるよう、心を砕いておられます。
荒木さんご自身は、慶応義塾大学文学部で美学・美術史を専攻された後、イタリアのペルージャでイタリア語を学び、トリノ大学で修士号を取得。その間、イタリア系企業で輸入や買い付けを経験し、独立後は、PRやカスタマーサービスを担当していらっしゃいました。この長いイタリアとの関わりの中で、「生まれた国を愛し、町を愛し、家を愛する」イタリア人の強烈な地元回帰という土着性に触れて、ご自分の生まれ育った場所や家業・ご家族を再認識し、大切にしなければという気持ちが強く芽生えたそうです。その結果、「地域に根差したイタリア的家族経営の伝統を守りながら、(病院理事の)務めを果たしていきたい」と語ってくださいました。
今年、東京女子医科大学3年生のご長女は、お母さまの荒木さん同様、ミッションスクールでの一貫教育と留学という経験を経て、お祖父さまや叔父さま方に倣い医師の道を選ばれたそうです。いずれ、「横山胃腸科病院」の新しい歴史に貢献される日も近いことでしょう。
(文:堀江&しおのさき 写真:成川)
資料&写真提供:横山胃腸科病院&荒木浩子さん
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横山胃腸科病院 tel 052 (332) 1181
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月水金の午前中、通常の検診同様、お昼頃には終了予定
入院コースは例えば大腸の検査で下剤を服用する場合など お泊りも可能です
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