タウンぶらぶら歩き

 東京銀座。オープンから間もない「ギンザシックス」横の道を入ると新美康明さん(S23)の「ピエロタ 牧神画廊」はあります。勤労感謝の祝日。歩行者天国の賑わいを通りぬけて、画廊の階段を上ると、この日は、女子部卒(G32)の日本画家「浦田由佳子個展」が開催されていました。(11月25日まで)

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             牧神画廊 東京都中央区銀座7の13の22 磯部ビル

 新美さんと浦田さん、「母校の先輩・後輩」であり「画廊主と画家」の関係。そのあたりも含めてお二人にお話を伺いました。
 まずは、「日本画家・浦田由佳子」さん。


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         浦田由佳子さん(G32) 作品「appassionato(情熱的に)」

 丙午(ひのえうま)生まれのG32期。開業医の長女として女子部に通う頃、旧姓の「藤原」から付いた呼び名は「かまたり」。名古屋芸術大学美術学部日本画研究科修了後、日本芸術院会員の浦田正夫氏に師事。師匠との絆も実にドラマティックです。

 「浦田先生は弟子をとらない画家でしたが、その画風が好きでした。年に数回、絵をみていただくようになり、30歳の時、先生が茨城県土浦の神龍寺の襖絵の依頼をうけて、そのお手伝いをすることになったのを機に東京に出てきました。88歳の先生に深刻な病がみつかったのは、それから間もなく。養子になって欲しいと請われました。実家の父などは相当ショックだったようですが、恩師の病床での望みを受けいれて養女になりました」

 「先生の亡くなられた後、襖絵の期日まで 1年とありませんでした。完成をめざしましたが、先生の下絵図を襖絵に拡大しても、そこには観る人を説得するだけの力はないように思えました。から下絵図を描き直して、自分なりの襖絵を9か月で仕上げ、神龍寺に38枚の襖絵と天井画を揮毫しました」

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            神龍寺 天井画と襖絵 浦田由佳子さんHPより)

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 「絵を描き続けながら、先生が亡くなられた時に77歳だった奥さまのお世話を8年間しました。実家の医院を兄に託して田舎暮らしを望んだ両親でしたが、1年後に父も亡くなったので、東京から今のアトリエがある山梨県小淵沢に移り住み、今は母との二人暮らしです」

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                                      浦田由佳子さんアトリエ (浦田さんHPより)

 そんな浦田さんの小淵沢での暮らしぶりに、「まず惹かれた」と新美さん。常盤会東京支部のお繋がりから始まった交流は、当時、北アルプス展望美術館の館長も兼任されていた新美さんの眼に、「浦田さんの小淵沢のアトリエの和の佇まいに心惹かれるものがあった。お母さまの手料理。アトリエと茶室。お軸に焼き物。和の設えに日本人の文化があった。それは浦田さんの絵にも共通するもの」と写りました。「今の日本人は、アメリカナイズされて、゛民族のみなし子"になっている。自然と共生する伝統文化を有する日本人。その民族性を理解して他の民族性も尊重する。自国ファーストのナショナリズムとは異なる、コスモポリタニズムが求められていると思う」

 今回の浦田さんの個展に寄せた新美さんの一文です・・「自らを自然に身を寄せるようにして置き、季節に垣間見える生命のドラマを、抹茶を点てるかのように静謐に描き続けてきた。浦田由佳子の作品は、人が求めてやまない美しさに安らぐために生まれている」

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 浦田さんも「日本画は、下絵図にエッセンスを詰め込んでイメージを拡大していくので、最後の作業は、職人的な細かい作業になります。そうした根気の要る作業も好きですが、でも、ここ数年は、限界を超えることをしてみたいと、墨で描いた上に和紙などを張って、最後まで偶然性や創造性を楽しんで、抽象画も描くようになりました。日本画って、日本人が描いた絵だと思うんですよ。自分との対話・絵との対話。観るひとにもそんな対話をしてもらいたいです。絵には希望を盛り込みたい」

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                          作品 Empathy1」・Empathy2(共感1・2)

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                                                 本展を訪れた常盤会東京支部の皆さま

 今日は、画廊主として、ギャラリーのデスクに座る新美さんですが、他にも、箱根のドールハウス美術館館長・横浜の幼保育園理事・青山学院大学講師などなど、いくつものお顔をお持ちです。


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                新美康明さん(S23) 

 折しも、今、愛知県の岡崎では、新美さんが館長を務める「箱根ドールハウス美術館」協賛のドールハウス展が「おかざき世界子ども美術博物館」で開催されています。世界の二大コレクションと言われる英国の「ヴィヴィアン・グリーン・コレクション」と米国「モッツ・ミニチュア・コレクション」を中心としたアンティークから現代作家の作品まで、訪れる人を魅了しています。(11月26日まで)


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                                                                    おかざき世界子ども美術博物館

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          世界二大コレクション・米国モッツ・コレクションの代表作「モッツ雑貨店」(左)
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 「モッツ雑貨店」は『大草原の小さな家』の原作者ローラ・インガルスの一家が住んでいたアイオワ州に実際にあった雑貨店を12分の1で縮尺したアンティーク作品。精巧さや美しさは言うに及ばず、往時の暮らしや営みの中の人々の息遣いを感じ取る楽しみがあります。

 緑に囲まれた「箱根のドールハウス美術館」では、より多くの作品が堪能できます。お出かけください。
  
          
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                                              箱根ドールハウス美術館 神奈川県足柄下郡箱根町芦之湯84-55 

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 さて、遍の真理や美を求めてやまない新美さん。今後の目標を伺いました。
「幼い頃より映像メディアに親しみ、そこで仕事をしてきた。が、それが益々デジタル化し、ネット社会をもたらすことで、人間社会に様々な弊害をもたらすようになった。その解決の糸口を、私は思い切り自然に抱擁された至福感を小説にすることで見つけたい。若い人たちにも伝えたいと願っています」

                             取材:塩野崎
牧神画廊 

箱根ドールハウス美術館

浦田由佳子さん HP




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