2016/10 めん処 おぎ野 – Nanzan Tokiwakai Web
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南山タウンに広告掲載されているお店や会社の訪問記

2016年10月27日

2016/10 めん処 おぎ野

地下鉄東山線「上社」駅。
この場所で、美味しいお店があると聞きつけ、お訪ねした。
めん処おぎ野。S39期生の荻野元さんがご夫婦で営むお店だ。

東改札口を抜けて2番出口。バスターミナルの脇道を東へ一分程歩くと、柔らかな店灯りが迎えてくれる。
暖簾をくぐり入って、はじめに目に飛び込んでくるのは、一枚檜のカウンター席と、掘りごたつの座敷スペースが2つ。木肌の内装に暖色系の照明が溶けこんで、店内全体の温かな印象に心がすっと落ち着いていく。

壁のお品書きに目を走らせると「信州蕎麦」「讃岐うどん」「きしめん」の文字。さらには「味噌煮込み」や「カレーうどん」に至るまで、「めん処」の看板の通り、幅広く提供されている様子。「自家製麺の天然出汁」の表記にも、自然と期待が膨らむ。

「夜はちょっとした肴もご用意して、お酒も楽しんでいただけるようにしてるんですよ」
カウンターの奥に目をやると、ずらりと並ぶ銘酒の数々。壁のメニューには「おつまみ三品が付く晩酌セット」から始まり、お酒好きがいつまでも長居したくなりそうな肴がたくさん。この他にも、常連さんのリクエストに応えた裏メニューも豊富そうだ。
取材者もたまらず、冷えたビールをお願いすることに。心の中で、本命にしてお目当ての麺類に「待っててね」とつぶやきながら、「メゴチの天ぷら」「茄子味噌チーズ焼」そして「関鯖の一夜干し」をお願いした。

霜の降りた冷たいジョッキに、程よい泡立ちと澄み渡る琥珀色。冴えたキレ味を喉越しで楽しんだ後、思わずこう尋ねてみた。「ご近所に住むお父さんたちにとって、このお店はたまらないでしょうね」名東区東山沿線は、大手企業の転勤族に人気のエリアだ。
「夜は仕事帰りに立ち寄ってくださるご近所の方も多いですね」

聞けば、この地でお店を開いたのが3年前。それまでは星が丘で8年営んでいたが、エリアの再開発に伴いやむなく移転をされたという。
「移転後もそのまま通ってくださるお客さんも多くて、ありがたい限りです」

平日のランチ時は近隣企業のサラリーマンで賑わい、週末の休日には、さらに彼らがその家族を連れて来ることも多いとか。エリアの人々の期待に的確に応えていくスタイル。これは開業時から確立されていたのだろうか。
「いえいえ、開業して最初の一年の頃は、毎日不安でいっぱいでした。もう一年頑張ってみよう、さらにもう一年、と試行錯誤する中で、三年目あたりからやっとなんとか安定してきた感じでしたね」
苦労が多かったと振り返る開業時代。そもそもこうしたお店を始めようとしたきっかけは?

「もともと父も、私が学生時代の頃まで麺類のお店を営んでいたんです。幼い頃からその背中を見ていましたから、独立に際しては迷いなく”よし、自分もやってみよう”と思いました」
荻野さんは、男子部を卒業された後、絵を描くことが好きだったこともあって美大に進学。公園の設計を始め数々のデザインを勉強され、卒業後は内装のデザインを手がける会社に就職されたとのこと。30歳まで様々な現場で精力的に作品を手がけてきたものの、時代はバブル崩壊後の90年代終盤。景気の悪化が進み、銀行の破綻が相次いでいたちょうどその頃、”本当に自分がやりたかったことは何であったのか”を考え直し、独立を心に決めたという。
そうして6年間の修業を積み、晴れて開業に漕ぎ着いたのが、11年前だ。現在のお店の賑わいは、奥さんとの二人三脚で頑張ってこられた賜物であろう。そんなご苦労をお聞きしているうちに、肴が運ばれてきた。

「揚げたてのメゴチの天麩羅」。
箸を入れると薄めの衣のサクッとした感触。上品できめ細かく、しっとりとした身が、舌の上でふわふわとほぐれていく。
「家内の実家が桑名で魚屋を営んでいまして、新鮮な魚が豊富に届くんです」
壁のメニューに再度目を走らせると「はまぐりの酒蒸し」を発見。なるほど、と感心しながら、続いて運ばれてきた「関鯖の一夜干し」に箸をつける。脂が乗り切り肉厚で柔らかい身を、焼き立てアツアツで頬張る。芳ばしい旨味が口中に広がり、もう箸が止まらない。

食欲に火がついて、いよいよ麺類を頼むことにした。
「自家製麺の天然出汁」…期待が膨らむ。出汁は鰹や鯵、鯖、昆布等のこだわりブレンド、
蕎麦粉は信州、うどん粉は讃岐、きしめんは幅二センチもあろうかという幅広麺なのだそう。取材者は、それぞれ「天麩羅蕎麦」「味噌煮込み」「きしめん(かけ)」をお願いした。

まずは「天麩羅蕎麦」。
手打ちで細め、弾力のある二八の蕎麦が、喉に清々しい。出汁は甘すぎず辛すぎず、コクが効いていて優しい味。天麩羅は、ふんわりサックリ、油の切れもよく、どれをいただいても素材本来の美味しさを直感する。打粉が豊富に溶け込んだ濃厚な蕎麦湯も、最後の一滴まで楽しませていただいた。

そして「味噌煮込み」。
グツグツと煮えたぎった土鍋の中に、煮込み卵を中心に刻み葱や蒲鉾が並ぶ。コシの強い麺が、何種もブレンドされた味噌の濃い旨味に絡みつき、それをさらに天然の出汁味が押し上げてくる。一味を振るとさらに香りと辛味がアクセントとなり、さらに食欲を囃し立ててくれる。絶品。

最後に「きしめん」。
天然出汁を最も楽しめる一品。油揚げ、ほうれん草、刻み葱、蒲鉾の上に鰹節がふわふわと踊っている。幅約2センチの白い麺肌は、熱を蓄えやすく、もっちりとした厚みも均一なため、ちぎれにくい。一本ずつ唇を滑らせて啜ると、さらにコシを感じられてこれも大変美味しかった。

(写真は、左から奥様・ご主人荻野元さん・ご紹介者の同期森川さん(S39)

「麺処」としてのこだわりが凝縮された、自然製麺の天然出汁。そこをベースに加えられる、来店者の嗜好に合わせた柔軟なアレンジ提案。リピートファンが通い続ける理由に改めて共感を深めていたところで、「南山の同期の仲間や先輩も、しょっちゅう来てくれるんですよ。先生もよくいらっしゃってくれてます」と微笑む荻野さん。

「部活のような感じで、いつも店内がワイワイと盛り上がってます(笑)」

気の合う南山卒業生同士、美味しいものに囲まれながら、荻野さんご夫婦の優しい人柄が天然出汁となって包み込んでいる。
・・・そんな温かい時間を、笑顔を伺いながらそっと想像した。

取材:加藤順平・杓谷桂子
取材協力:森川将士(S39)

めん処おぎ野

愛知県 名古屋市名東区 上社 1-703 明和ビル 1F
TEL:052-776-3788
営業時間11:00 – 14:30,17:30 – 22:00(21:30オーダーストップ)日曜日定休

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