vol. 49 大久保 洋子(G15)「Noblesse oblige/身分に伴う義務」 – Nanzan Tokiwakai Web
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2010年4月28日

vol. 49 大久保 洋子(G15)「Noblesse oblige/身分に伴う義務」

経済誌に取材記事を書いています。とはいっても隔月刊なので年に数えるほどで、人に話すのもおこがましく、職業を聞かれるとつい『専業主婦』と答えてしまいます。それでも長い年月にお目にかかった経営者は相当数になります。取材対象は会社の大小に関わらず『今、元気な会社』です。
 
元気な会社にはそれぞれの理由があり、成功の理由が運だけではなく、たゆまぬ努力や開発力にあることもよく分かります。 それにしても創業者は大抵魅力的です。流行の言葉(好きではないけれど)で言えば、カリスマ性があるということです。何故か人が集まってきます。損得抜きで手伝ってくれる人がいます。過去の善行に因ってお金が降ってくることさえあります。多額の融資を受けられるというようなことです。
 
ただほとんど全ての経営者に共通するのは、谷間を経験しなかった人はいないということです。金銭問題だけでなく、時代の流れ、競合会社の台頭、風評被害、あらゆる時に谷間が突然現れます。けれども谷が深いほど山頂は高いものです。その谷間から見事に駆け上がって頂に向かう方々のお話には、毎回目の覚めるような思いです。
起業家とは谷を恐れることなく夢に向かって出発する人のことかもしれません。
 
残念なことに事業は継承できても、魅力的な性格が引き継がれるとは限りません。
そうして苦労知らずの二代目、三代目が身上(しんしょう)を食いつぶす例は枚挙にいとまがありません。創業者自身が引き際に暴走することも珍しくありません。私はこれを密かに『秀吉化け』と名付けています。もし秀吉が朝鮮出兵などせずに、その費用を国内の社会貢献に使っていたら・・・もし幼くひ弱な秀頼に拘らず、優秀な家臣の中から後継者を選んでいたら・・・歴史に『もし』は禁物ですが、私たちのこれからの手本にはなります。
 
秀吉が後継者を血筋に頼る姿は現代の人々からは滑稽にさえ感じますが、名家や富豪でなくとも今も同じようなことは続いています。親たちの悲愴な本能かもしれません。二代目、三代目がより良く引き継ぐ例も時折あるので、親の目は益々曇ります。
 
経営者の突然の暴走は、有能な番頭が黒子になって働く会社には少ないようです。
働く人は皆、地位が上がるにつれて叱ってくれる人が少なくなり、独善に陥りやすいものです。叱ってくれる人、進言してくれる人は『世間の物差し』を知らせてくれる存在です。黒子は番頭だけでなく、真の友だちとか恩師とか配偶者のこともあります。
 
一方人生で病気とか、戦争とか、生死を分けるような辛い体験をした人、宗教などで道徳観が確立した人も自らの分を心得ているようです。本当の贅沢はお金をばら蒔くことではなく、社会のために働き人に喜んでもらうことを自らの喜びにできる、と知る人です。
 
何でもかんでも欧米の真似をして羨ましがる日本人を疎ましく感じますが、良い所は素直に認めて真似したいと思います。
 
“Noblesse oblige(仏)”:高い身分に伴う義務《名誉を重んじること・慈善を行うことなど》
 
日本にもそのような経営者が増えて欲しいと思います。経営者だけでなく、身分の高い人だけでなく、1人ひとりが少しずつでも誰かの助けになることに喜びを感じて欲しいと思います。
 
 
 
大久保洋子さん(G15)プロフィール
 
「PHP Business Review」という経済誌で記事を書いています。
(依頼を受けることも、こちらから提案することもあります)

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