vol.170 長谷川 千江子(G25)「コペンハーゲンと東京で」 – Nanzan Tokiwakai Web
  1. HOME >
  2. メルマガコラム

メルマガコラムMail Magazine Column

過去に配信した「常盤会WEBメルマガ」の記事を掲載しています。

2022年5月15日

vol.170 長谷川 千江子(G25)「コペンハーゲンと東京で」

 日本で生活する外国人と関わる仕事をしている私は、彼らとの会話から日本や世界で起こっていることが人々のささやかな日常や人生設計を大きく左右していることや男女、夫婦、家族に関する考え方の違いを教えられる。また、留学生からは日本が海外からどのような国に映っているのかなど外から見た日本について考えさせられる。
 
 ゴールデンウィークにコペンハーゲンに古い友人を訪ねた。幸いフィンランドとオランダからも友人たちが合流した。皆 高校時代をアメリカで過ごした元留学生で、リアルでも、オンラインでも集えば時は高校時代に戻って話がはずむ。結婚生活を幸せに続ける友もいれば、卒婚を謳歌している友もいる。皆、還暦をすぎた若者たちだ。
 
 私のフライトはロシア上空を避け、地球を大回りしたが飛行機を降りて約30分後には私は友人の車に乗っていた。経由地のヒースローでも、コペンハーゲンでも空港での入国審査などで、新型コロナウイルス感染症への水際対策なるものは何もなかった。空港で多分半数くらいの人がマスクを着用している程度。市中ではマスクをしている人はいない。“ニューノーマル”の私には何とも居心地が悪かった。現地の人々は皆、あたかもコロナ禍は過去のことという捉え方。かつてはロックダウンも経験しているが、ワクチン接種も進み、感染者数というものだけにとらわれていない、科学的根拠が示され、感染しても重篤になる可能性は低いとされ、インフルエンザと同じように捉えられているという。
 
 さて、友人の住むデンマークは北欧の中でも最も南、ユトランド半島と500近い島々からなる王国で、首都コペンハーゲンもシェラン島という島に位置している。国土はパンケーキのようになだらかでフィヨルド、丘陵や森が美しい。特に4月下旬から5月は新緑が芽吹き、菜の花のまぶしい黄色とムギの緑が鮮やかなコントラストを成し、パッと心を晴れやかにしてくれる。通りにはモクレンや八重桜がたくさん植えられ、満開の枝はとっても重そうで大迫力!また、すれ違う人々の顔は日本の人々より幸せそうな表情をしていると感じたが、そうだ!世界一幸せな国と言われるほど国民幸福度が高いのがデンマークだったと納得。
 
 空が真っ青に広がる一日、 野外博物館に出かけた。バックパックに各自ランチと、ホウロウカップと温かい紅茶の入った水筒を入れ、ペットボトルなど使わない。プラスチックのフォーク、ナイフの代わりに日本から持ってきた 箸を素晴らしい!と言って大喜びで使った。本当に日本のmy箸は素晴らしい!
道中の会話もまた私にとっては気づきの玉手箱のようだった。
 
 例えば 日本のジェンダー不平等の問題を私が口にすると、フィンランド人の友人がコメントをくれた。「Chiekoは、スパルタ(1977年の留学先)にいる時も同じことを訴えていた。当時私自身は、そのような不平等が存在するということさえ知らなかった。なぜってフィンランドでは生まれた時から、男女は平等なのが当たり前の社会だったから」と。えーっ?!それって日本が45年前から変わってないってこと?!落ち込んだ。彼女は続けて言った。「フィンランドの現首相は36歳の女性だが、彼女は今までの首相より給与が高くないと聞いている。でもそれはジェンダーの問題ではなく、若く経験が浅いからという理由だけだと思う」と。
そういえば、フィンランドの首相は最近来日し、東京大学で講演をされたとメディアが報じていた。ダイバシティ改革にとりくむ東京大学の林香里副学長(G29)にも会われただろうか?
 
 また彼女は、フィンランドはロシアとの一番長い国境線を有しているため、ウクライナ侵攻は大変大きな危機で、戦闘準備を整えつつあり、心の中では既に戦争は始まっている、と言った。
確かに、ヨーロッパの人々にとってこの戦争は対岸の火事ではない。コペンハーゲンの中央駅や主要な建物にはウクライナの国旗が掲げられ、デンマークのウクライナ支持を強く表している。コペンハーゲン中央駅にウクライナからの避難の人々が到着した時、最初に彼らの目にウクライナ国旗が入るようにという思いも込められているそうだ。
また、ペットボトルやアルミ缶、ガラス瓶などはリサイクルに持っていくと、お金が返ってくる仕組みになっているが、そのお金をもちろん自分で受け取ることもできるし、ウクライナ支援のために寄付することもできる。コペンハーゲンの友人は、この戦争が身近にあると感じ、ささやかながら日々支援することは当然だ、と淡々と話してくれた。
 
 男女平等、環境、平和への心構えなど、友人の話を聴き足踏みするばかりの日本にため息。
 
 さてさて、ニシンの酢漬け、スモークサーモン、スモーク数の子、チーズなどをライ麦パンにのせたオープンサンドイッチをいただきながら、濃厚で幸せな時間はあっという間に過ぎ、友人たちはあたかも自国内を移動するように何事もなく帰国した。私はというと、帰国便搭乗72時間前までのPCR検査の陰性証明が日本入国に求められるため検査場を訪れた。何度でも無料でPCR検査を外国人旅行者でも受けることができ、結果も半日以内にアプリに届いた。
 
 ロンドン経由で東京に戻ると、空港での水際対策は昨年3月アメリカから帰国した時(この時はまだコロナが感染拡大し、まだワクチン接種が行き届いていない状況) とほとんど変わっていない。むしろ対応は変わっていないのに入国者数が増えているため、混雑がひどくなって密になっている状況だ。ワクチン接種済みの人も多い中、あたかもまだ全くワクチンを受けていない人たちばかりの時と同じ。こういう対応、お金のかけかたってどこか違いませんか?と不思議に思うばかり。マスク着用にしても然り。状況によって必要か否かを考えることなく今や体の一部のように着用し続ける。
もうそろそろ、科学的根拠に基づいた現実に即した素早い変化が必要なのではないか?
 
 オランダの友人が言った“オランダは小さな国。だからどんどん外に出ていく必要があった。”という言葉を思い出す。日本はどこに向かっている?
 
 
プロフィール
 長谷川千江子G25
 女子部時代は水泳部と放送部に所属
 南山大学イスパニア科卒業
 中日新聞社、
 国際交流基金Japan Outreach Initiativeコーディネーターを経て
 現在都内官公庁勤務

メルマガコラム一覧