vol. 68 小山 しげ子(G13)「冬の薔薇」 – Nanzan Tokiwakai Web
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2012年3月24日

vol. 68 小山 しげ子(G13)「冬の薔薇」

 薔薇は本来 四季咲きのものが多く、気温が一定であれば一年中咲く花を楽しむ
ことができる。四季のある日本では、春と秋の花を見頃とし、その見頃の花を
素晴らしく咲かせるために冬には苗を冬眠させてしまう。12月には早々に枝葉を
払い仮剪定をし、1月、真冬前の本剪定ではかなり大胆に丈をつめて春の到来を
待たせる。

 けれど、私は冬の薔薇が好きで、春の大きく見事な花の準備など考えず、自然に
形を成した枝につく花が、ありのまま、冬の風にそよぐ冬の薔薇を楽しむ。

 そうして、いよいよ雪が降り、雪の中で凍てつきても凛と咲く薔薇を愛しみ、
それから鋏を入れることにしている。

 今の冬、雪が溶けても、紅色の大輪を一輪残した一本の薔薇には、どうしても
鋏を入れることができなかった。この薔薇は、長年の「友」であったK君の希望で
植えた一本だ。

 K君とは本当に長い付き合いで、間違いなくこの先も「友」であるはずだった。

 互いに進んだ道は違ったが、何だか馬が合い、年に一度会うか会わないかだったが
大切な「友」の一人だった。それが、ある日を境に、K君の生き方が気になるように
なった。

 勤め人のK君が、定年迄の自分を考えたのだと思う。これ迄の自分を振り返って
みたのだと思う。私の前に、予想もつかなかった人生後半のK君が出現した。

 ひとは別人に変わることがあるようだ。現実に有るものは家族でさえ、人生後半の
K君には、もう必要がなさそうだった。

 真冬のような今年の弥生月だが、K君の薔薇は一番に春の小さな芽をつけた。其の
枝に残した大輪の冬の薔薇は、色も褪せず凛としていて、何だかK君の人生後半の
決意のようで…。

 散る時期も自分で分かっているであろうから、この冬の薔薇は、鋏は入れずに
見ていることにした。

氏名:小山 しげ子

 年齢:年齢不詳を漂わせたい G13

 南山時代:図書室が居場所、授業中も読書三昧

 大学時代:油絵から陶芸で卒業 

 職業:生涯現役? 自社取締役 ただし 社員 兼 雑用係

 人生:『「美」は「知性」から』…を、信じ、美を維持したいがために今頃、
    勉学に励んでいる。

 夢:パリで3カ月の充電休暇を取りたい。

 余暇:60本の薔薇の世話

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