からかみ屋 柏彌紙店 – Nanzan Tokiwakai Web
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南山タウンに広告掲載されているお店や会社の訪問記

2011年10月9日

からかみ屋 柏彌紙店

大須の交差点から少し南の門前町の角にある昔ながらの建造物、それが今回おじゃました『からかみ屋 柏彌紙店』さん。こちらで扱っているふすまや和紙について教えて頂くことを楽しみに訪れたところ、建物自体もとても魅力的。取材を始める前から期待に胸が膨らみました。

今回、取材を受けてくださったのは7代目のご主人である尾関和成さん(S20)。尾関さんの気さくで温かな人柄と、お母様の入れて下さるおいしい抹茶がそのショールームの居心地の良さを引き立ててくれていました。

ショールームに入ると、まず目に飛び込んでくるのが大きな木の机。厚みがあり、重厚感と年代を感じさせるものです。もともとは掛け軸をつくる作業台として使われていたものだそう。程よい部屋の広さと雰囲気、そして空間の居心地の良さのせいか、取材をさせて頂いている間にも次々と様々な業種の方々が出入りをし、みんながおいしい抹茶を頂きながらいつの間にか一緒に会話をしている、そんな素敵な雰囲気の場所。

ショールームにある机の横には社長のお母様が使用されている鉄瓶と火鉢が。

こちらを使って入れてくださった抹茶や白湯は格別でした。

訪れる方々を癒してくれること間違いなしです。

こうした1つ1つのところにまで気を配り、

日本の伝統を受け継いでいるところがこちらのショールームの魅力の一つなのかもしれません。

 

ショールームに展示されてあった屏風や明かり。

これだけで和の素敵な雰囲気が伝わってきます。

吉野紙は紙をすく時には石の粉を混ぜます。

そうすることによって紙が柔らかくなり、

巻くことが出来るようになるのだとか。

砕く前の石や掛軸の裏打紙を貼るための刷毛などが展示されていました。

『柏彌紙店』は1824年創業。

初代は岐阜の美濃から出て来られた方で、当初は和紙と墨・硯を扱うお店だったそうです。その後、明治40年に4代目が今回おじゃました中区にある建物を建てられ、実質的に商売を始めたのは5代目だそうです。その頃は和紙、ふすまの紙、掛け軸の紙、お札の紙など紙全般を取り扱っていたという『柏彌紙店』。7代目が子どもの頃はトイレットペーパーや包装紙、挨拶状に使う『こまがみ』やマッチの箱に貼る紙なども扱っていたそうです。それが時代のニーズに応えるように少しずつ変化し、今では『からかみ屋 柏彌紙店』としてふすま紙や明かり、屏風やロールスクリーンなどを手掛けるようになってきたということです。

では、いつ頃から『柏彌紙店』を『からかみ屋 柏彌紙店』と呼ぶようになったのかを伺いました。

「『からかみ屋』と呼ぶようになったのは、平成2年から。その頃、東京・名古屋・大阪・福岡・新潟の紙を扱っている卸屋さんがにふすま紙のPRを目的にショールームを作り始めた。そのショールームを立ち上げたグループが専門に作っていたのが『からかみ』だったから、それを業者さん達にどんどんPRしていこうと思って、『からかみ屋』と名付けた。『からかみ』という言葉は、平安時代に唐から伝わった紙をふすまに貼っていたことから、ふすまに貼る和紙をそう呼ぶようになったんだ。」

「ショールームの1番目は東京で平成2年5月。2番目がここの名古屋で同年12月。その後、翌春になって大阪。普通、東京の次は大阪ってなるけど、東海道なら東京の次は名古屋だから絶対に2番目にやりたいと思って割り込んじゃった。」と、当時の様子を楽しそうに振り返りながら、この名古屋店が2番目に誕生したいきさつも教えて下さいました。

左の写真は『からかみ屋』オリジナルの見本帖。その他にもふすま絵のサンプルやからかみの見本など、和紙の種類や絵柄など、アイディアも満載。

どれも素敵でいつまでも迷いそう。

迷った時はそれぞれのニーズや生活様式に合わせて的確な提案をしてくださること間違いなしです。

さて、お話上手な尾関社長。お話を聞いているとどんどんと話が膨らみ、伺っているこちらまでもがその世界に引き込まれていくようでした。その知識と経験はどこから来ているものかと、このお仕事に就かれるまでの経歴を伺ってみました。

「大学を卒業したのは昭和47年。卒業後は京都で3年くらい家業を継ぐために修行して、戻ってきたのが昭和50年。でもその後は青年会議所(JC)に入ったので、ほとんど家の仕事には関われていなかった。本格的に仕事を始めたのはJCを卒業した40歳の頃から。父親が倒れたこともあり、社長になったのは平成3年8月から。日本の文化や歴史、ふすまや和室のことに詳しくなったり、いろいろと見に行ったりするようになったのも、その頃から。仕事柄、歴史的な話しをしたり、話すネタを作ったりするためにはまずはいろいろと見ないといけないと思った。」

とはおっしゃるものの、話しを伺っていると、小さい頃からお父様に連れられて様々なところに足を運ばれている様子。そして、今では東京・京都の美術館や琳派や伊藤若沖の展示など、和の伝統に関する様々な機会に時には息子さん(良祐さん S50)と一緒に出掛けては見解を深められているそうです。現在でも古くから残っているふすま絵やからかみにはとても興味を持たれており、機会があれば見に行かずにはいられないのだとか。

そこで、尾関社長のおすすめスポットを伺いました。

「京都の高桐院は特に好きで、修業しに行っていた時から好きな場所。きれいな庭があって、紅葉ももちろんきれいだけれど、実は春先もきれい。他には、小さい時から父親に連れていってもらってた修学院の方の詩仙堂にも何度も行ってる。建仁寺の風神雷神図がある休憩所も好き。そこはとても広くて風通しがいい。夏に行ってそこで昼寝をするのがすごく気持ちが良くておすすめ。そこの壁には家紋があって、そういうのももちろんしっかりと見てくる。」

「あと、お茶会にもよく参加する。いろいろなところのお茶室を見るのは好きだし、仕事の役に立つ。お茶室を作りたいって言う一般の方の相談にのるためにもやっぱり見ておかないと具体的な話ができないからね。」

また、尾関社長のお家では小さいころから抹茶を飲む習慣があったのだそうです。学校から帰ると自分で抹茶をたてて飲んでもいたのだとか。町屋の文化が残ってて、お客さんがいらっしゃると珈琲じゃなくて抹茶を出す。そんな習慣が昔からあったのだそうです。

そういったことを伺うと、このショールームの和のぬくもりや、ごく自然に準備されている色とりどりの和菓子と入れたてのお抹茶に思わず納得。

和の心を大切にする方ももちろん多い一方で、以前の日本の家には当たり前のようにああった和室が、今では全くない家も少なくはないと言います。あったとしても物置になっていることも多く、尾関社長は少し寂しく思われている様子。

「建築が代わり、生活様式が変わってきたから仕方のないことかもしれない。以前のように、お客さんを家にあげたりする機会も減ってきていると思う。和室を取り入れる住宅もあるけれど、やっぱり昔のように山水画のふすま絵は合わないから新しい図案で、良いものを残しつつも今の住宅に合うデザインの提供をしていかないといけない。」と尾関社長はおっしゃいます。

しかし、その反面、古くからの物を残していこうという動きがあるのも事実。

この『からかみ屋 柏彌紙店』の建物は明治40年に建ちました。当時の家は防火のために黒塗りにしたのだそうですが、戦争でほとんどが焼けてしまい、今ではこうした黒塗りの建物は珍しいとのこと。現在、名古屋市が始めた活動として、「身近にある歴史的な建物を保存・活用しよう」という活動があり、この建物が認定第1号になる予定なのだとか。こうした活動が少しずつ広がっていくのも嬉しいことです。

ショールームの外観。

平成23年10月10日に行われた「歴史的建造物シンポジウム」の様子。

たくさんの方が『からかみ屋 柏彌紙店』を訪れていました。

さて、『からかみ』のお話をたくさん伺った後に案内していただいたのが2階のショールーム。1階のショールームとはまた違った良さがあるとともに、ここにも古くからの建物だからこその魅力が溢れていました。

階段を上って2階に行くと、まず驚くのがこちらの明かりとり窓。

写真では分かりにくいのが残念ですが、

何十メートルも先に見える太陽の光がなんとも素敵。

旅館のような2階の和室。

ふすまにはそれぞれ素敵な絵柄が。

それらを見るだけでも十分楽しめます。

種類も豊富な引き手。

手をかけて、開け閉めをしやすくする機能性はもちろんのこと。その家の主人の人柄を表わすものとして、古くから単なる小道具以上の役割を担っていたそうです。

また、伝統的なからかみの意匠の邪魔をしないようにしながらも、その意匠や紙質の良さをさらに引き立てる存在としても大切に考えられているものだそう。そのため、このショールームにも実物を見てもらおうと、たくさんの見本が並べられていました。

7代目の尾関和成さん(S20)と8代目の良祐さん(S50)。2階ショールームのお茶室にて。

こちらにある掛け軸の絵は、全て画家だった3代目尾関東園氏によって描かれたものです。

先祖代々受け継がれているものや日本に古くから伝わる文化をとても大切にされていることが言葉や行動、扱われているもの一つ一つからにじみ出てくる『からかみ屋 柏彌紙店』。

時代の流れと共に少なくなってきている和室や、日本の古くからの慣習。今回お話を聞くことで、自らの生活を少し振り返り、日本文化の良さを少しでも普段の生活の中に取り入れていきたいと感じさせて頂くことができました。そして、時には少し足を運び、和の世界にどんどんと触れていきたいと思いました。

こうした機会を与えてくれた『からかみ屋 柏彌紙店』の皆様に感謝するとともに、これからも私たちの生活の中に日本文化の良さを伝えていって欲しいという気持ちでいっぱいになりました。

(取材:阿部・山田 写真:尾関・山田・HPから)

『からかみ屋 柏彌紙店』

HP:http://www.karakami.com/JPN/index.html

★☆★尾関様family情報★☆★

7代目の尾関社長の奥様まり子さん(G15)も8代目良祐さんの奥様由加里さん(G45)も女子部の出身。そして、尾関社長のご長女、阿部美希さん(G42)もまた、女子部ご出身です。

まさに南山一家。

現在、ご長女美希さんは、ご主人の正彦さんがシェフを務めるフレンチレストランVerveineのマダム。

独自のアンテナを張り巡らせ、美味しい食材をVerveineにて紹介されているそうです。

素直に「美味しい!」「幸せ!」と思っていただけるようなお料理を、というメッセージの通り、HPからは、家庭的でリラックスした雰囲気が伝わってきます。機会がありましたら、是非立ち寄ってみてください。

フランス料理 Verveine(ヴェルヴェンヌ)

横浜市青葉区美しが丘

HP:http://verveine.net/

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