2013/1 うなぎの有本 – Nanzan Tokiwakai Web
  1. HOME >
  2. タウンぶらぶら歩き

タウンぶらぶら歩きTown BURABURA Walking

南山タウンに広告掲載されているお店や会社の訪問記

2013年1月1日

2013/1 うなぎの有本

名古屋めしといえば、ひつまぶし。「うなぎの有本」は、備長炭で焼く国産極上うなぎがこだわりの、創業70年のうなぎと四季の和食のお店です。

千種区日岡町、名古屋大学のキャンパスと椙山女学園を東西に結ぶ幹線道路に沿い、文教地区の中ほどに在る店舗をお訪ねいたしました。大寒の日曜日、まだ空気が温もりを帯びる前、迎えてくださった女将の有本節子さん(G08)の笑顔に、一気に、体感温度もあがるようです。

男子部・大嶽先生の手書きの看板が目をひくエントランス   陽光溢れる店内

 

節子さんが、創業者で先代の有本富夫さんの跡を継ぎ、女将になられたのは、昭和58年、37歳の時でした。男子部・女子部在学中から顔見知りであったご主人の有本勝さん(S10)のお父さまである富夫さんが病に倒れた時、「 ”おっちょこちょい” なので(笑)・・引き継がなければ・・」と女将の覚悟を決められたのだそうです。自称 ”おっちょこちょい” は、知る人ぞ知る ”義理人情の厚さ” の証に違いありません。後輩たちの面倒見もよい節子さんの周囲には、おのずと人が集まります。名古屋大学・南山大学の先生方、南山中・高・大の同窓生のみならず、各界で活躍中の芸術家たちが、美味しいうなぎとお酒と女将のお人柄に惹かれて集います。

うなぎの有本 女将の有本節子さん G08

時無しに伺っても、馴染みのお名前やお顔に出逢える「うなぎが自慢の和食処」。カウンター越しのガラスの向こうでは、備長炭でうなぎを焼く板前さんの姿が見られます。この一枚のガラスのフレームこそが、「うなぎ有本」の二つの顔を象徴する「窓」 なのではと、足しげく通いつめるうちに、ハタと気づきました。

一つ目の顔は、もちろん、「うなぎ」。このガラスの内側で、串にさされ、赤く染まる炭火の上で、白い身を焦がし、美しいタレを纏って、極上の蒲焼に変身したうなぎが、私たちの味覚を満たすとき、「有本」が、うなぎの老舗だと実感します。


ひつまぶし                松花堂弁当
けれども、うなぎ屋さんにありがちな、炭火の煙も、焼き焦げる匂いも、この二重ガラスが、完全にシャット・アウトしているばかりか、このフレームに切り取られた「うなぎ」のこちら側では、十二支の陶芸作品や小さな生き物のメタル・アートが飾られ、季節の掛け軸や生け花が設えられた空間に、四季を愛でる心や、女将の物を観る眼の優しさを感じる繊細な世界が存在しています。この文化的要素こそが、「うなぎ有本」のもうひとつのお顔です。

節子さんには、30年前から暖めておられた構想がありました。カナダ・バンクーバーに滞在したホテルの空間で、本や資料が貸し出されて、宿泊客がお酒を味わいながら、知的にくつろぐ姿を目にしてから、「食を味わいながら、文化・芸術を楽しんでいただくスペースを提供したい」という願いをずっと抱き続けていらしたそうです。

「うなぎの有本」が、創業地である尾頭橋から住吉町と構えを移して、現在の場所で営業するようになったのは昭和49年ですが、女将になられた59年ごろから、折に触れて『知に遊ぶ 味に遊ぶ会』を企画。各分野でご活躍の方をお招きした講演会・コンサート・個展・文化講座などを継続して開催してこられましたが、昨年の平成24年6月、念願の「サロン・ド・Arimoto」を実現させました。

「サロン・ド・Arimoto」は、12年前にリニュアルした店舗の2階スペースをサロンに開放。長年、親交のある名古屋大学の福井康夫教授の賛同とご協力を得て、名大教授陣による「サロン・ド・Arimoto 講演会」を、昨年6月・8月・10月・12月の4回にわたって開催。5回目の次回は、平成25年2月12日、渡邊誠一郎教授に「小惑星からの贈り物ーはやぶさ2の挑戦ー」をご講演いただく予定です。

同じく、2階のギャラリーは、福井教授によって「アート・スペース」と命名されて、数々の芸術作品の展示などが行なわれています。昨年は、女子部の美術恩師の河村剛ちよ先生の「帽子展」もご披露され、剛ちよ先生の従兄弟にあたる河村たかし名古屋市長をはじめ、女子部の教え子や卒業生たちが有本さんに結集したのは、記憶に新しいことです。

ご主人・有本勝さん(S10)の画集出版を記念して開かれた画展 2010年アート・スペース

店内やアート・スペースには、同窓の花道家・小川珊鶴先生(S30)の手によるお花がアーティスティックに飾られています。親交の深い南山大学・文学部の安田文吉先生には「知っているようで知らない熱田神宮にまつわるお話」をしていただく計画もあるそうです。

花道家・小川珊鶴先生(S30)による「中秋の名月・尺八と琴の夕べ」の設え 2012年秋

「 講演会のきっかけは、20年以上前に、千種区城山にある相応寺の当時のご住職が、尾張藩主・義直が生母・於亀の方の菩提を弔って相応寺を建立したことから、大奥のお話をしてあげると仰ったのが、始まりでした。以来、神さまが、次々とチャンスを与えてくださっている。うなぎを焼いて何十年・・で、外の世界に出て行けない私に、みなさんが、次々と、居ながらにして、お話をもってきてくださる。ありがたいことです」と仰る節子さんの口癖は、きっと、ご本人は気づいていらっしゃらないと思いますが、「ありがとうございます!」です。 優しさを、私たちに惜しげもなく与えながら、いつも「ありがとう」と、幸せの連鎖を私たちにくださる先輩です。

南山時代のことをお聞きすると、間髪いれず、「楽しくて、楽しくて、しようがなかった(笑)」。昭和区の菊園町から徒歩で片道30分かけて通う通学路も「まだ農家も多くて、ハトがクックゥ、クックゥと鳴いてました。乗り物なんか無いから、坂を三つも四つも山越えて・・(笑)」

英語部で、中村敬先生を「けいさん」と呼んで英語劇をしたり、体操部では屋上でコロコロとマットに転がったり、時々、音楽部にも顔出したりと、「何の心配もない学校で、ルンルンでしたね」。でも、そんなに部活動に熱心で、徒歩30分では、冬の帰り道はさぞや真っ暗だったのでは?「それが、中二の時の担任の山際静子先生が、『アンタは、英語がチョットだから、男子部の黒川先生の英語塾に通いなさい』と仰って、数人で通っていましたね。そのお陰か、南山大学英米科の第1回の卒業生になりました(笑)」

屈託ない中高時代の面影が、容易に想像できますが、ご主人のみならず、ご実家の西川印刷の跡を継がれた長弟の西川輝男さん(S15)も、次弟の誠也さん(S18)も、一家揃っての南山ファミリー。おまけに、南山小学校に通うおふたりのお孫さんにも恵まれた節子さんの今一番のストレス解消法は、お店の定休日を利用して出かける保養旅行。

熱海から「踊り子」号とバスに乗り換えて行く先は、伊豆にある温泉のサナトリウム(保養所)。晴れた日には富士山を望む温泉で疲れを癒し、東洋医学の専門医の推奨する玄米ご飯、にんじん&りんごジュース、しょうが紅茶などのメニューで、体内からデトックス。リスが枝に遊ぶ遊歩道を散歩し、街道沿いに並ぶ、東京からの工芸家たちのアトリエで、デコパージュ、ステンド・グラス、吹きガラスなどの制作に励む。雨の日には、赤沢温泉まで足を伸ばし、ホテル内の海洋深層水のプールに入る休日の過ごし方。「みなさまにとっては、ささやかかもしれない私の人生の楽しみ方かもしれません。でも、感謝、感謝の毎日です」と、胸の前で手を合わせる節子さんの姿に、昨年、土用の丑の日、FMラジオから流れてきたある情報を思い出しました。「うなぎの有本さんでは、土用の丑の日は、毎年、休業して、うなぎ供養をしているそうです」・・これってホントの話なんでしょうか?・・笑顔で「はい」とお返事がありました(笑)

ご趣味は、『平家物語』。「6ー7年前から、安田文吉先生の奥さまの徳子先生に、有本にきていただいて、『百人一首』の講義を受けていましたが、同窓生を含む数人のお仲間とのおしゃべりも楽しくて、脱線ばかり。一回に一首進むのがやっとという日もあって、百首がようやく、終わりました(笑)。次に始まったのが『平家物語』ですけれど、こちらは、あくまでも、プライベイトな集まり。でも、せっかく、こうしたアート・スペースがありますので、みなさんにも、どんどん活用していただき、文化交流の場に使っていただきたいですね」

美味しいお酒とお料理があり
知的好奇心も満たされて
同窓や同好の仲間にも逢える時・・

私たちは、それを「極上の幸せ」と呼びます。
そんな贅沢を叶えてくれる場所・・
「うなぎの有本」「サロン・ド・Arimoto」で ぜひ、みなさま、お逢いいたしましょう。

文:塩野崎 写真:吉田

講演会「小惑星からの贈り物ーはやぶさ2の挑戦ー」への参加お申込みと
「アート・スペース」ご使用希望のお問合せはこちらに。
もちろん、お食事のご予約もどうぞ。

〒464-0834
名古屋市千種区日岡町1-9
TEL FAX 052ー763-3807
定休日 月曜・第3火曜日

過去の「知に遊ぶ 味に遊ぶ会」 講演・コンサート・個展の詳細はこちらをご覧ください。
http://www.ichi-mai.jp/unagiarimoto/

タウンぶらぶら歩き一覧