2014/10 たてしな藍 – Nanzan Tokiwakai Web
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タウンぶらぶら歩きTown BURABURA Walking

南山タウンに広告掲載されているお店や会社の訪問記

2014年10月14日

2014/10 たてしな藍

長野県茅野市。八ヶ岳山麓に広がる蓼科高原は、登山・ハイキング・スキーなど通年の楽しみ、有数の温泉郷を抱き、東京圏・名古屋圏からも人気のリゾート地。軽井沢と並ぶ信州きっての別荘地でもあります。国道152号、299号(メルヘン街道)、そしてビーナスラインが、いずれも風光明媚な高原を縦横に貫き、春夏秋冬、四季折々の顔を見せてくれます。

藍染と懐石料理の宿「たてしな藍」は、そんな蓼科にあって、名料理旅館と誉れ高い。5年前のリニューアルを機に、丹羽雄嗣さん(S36)が、先代の父上の跡を継ぎ、二代目オーナーになられた「たてしな藍」を訪れました。

名古屋から中央高速で2時間。諏訪湖を一望できる諏訪インターを降り、ペンションや蕎麦屋が点在するメルヘン街道に入り、15分も走れば、そこはもう標高1000メートル。車窓からの風の匂いが変わり、左手に白樺・カラマツの樹林に佇む「たてしな藍」が見えてきます。白樺林の一画を拓いた駐車場から、作務衣の番頭さんの案内で、藍に染め抜いた暖簾をくぐり、天然石の飛び階段を上りつめると、玄関で二代目オーナーの丹羽雄嗣さんに迎えられました。


長野県茅野市蓼科高原横谷峡 「たてしな藍」

9月初旬、まだまだ、夏からのハイ・シーズンが続く中、月曜のお昼ならと多忙なお時間をいただいての取材となりました。今年にはいって5月GW、8月お盆に続き、3回目のお食事で、ようやくラブコールが叶っての取材タイム。実は、30年来の「藍さん」ファンであったところ、茅野市在住の男子部先輩から、「オーナーは男子部出身者」との確かな情報を得たことで、「母校支援のための南山タウンに広告を!」と猛アタックを開始。「母校支援・・そういうことでしたら」と快くご協力くださった丹羽さんに心からお礼を申し上げます。


「たてしな藍」二代目 丹羽雄嗣さん(S36)

30年ほど前、蓼科に「名古屋からの脱サラリーマンが料理旅館を始め、その料理がなかなか美味しい。女将の染める藍染の工房と教室も、家族ぐるみで楽しめる」と山荘ニュースで広まりました。ウワサにたがわず、繊細な懐石料理は、味わい深いもので、みるみる評判が高まっていきました。

ウワサのその頃、二代目は、いったい何歳だったのでしょうか。気になる真相から伺いました。「今から31年前、私は17歳。南山高校2年の時でした。製造業を営んでいた父が、安曇野、伊勢志摩、蓼科に土地をもっていたことがきっかけで、料理宿を始めることになりました。ちょうど、清里などのペンション・ブームの頃でした。蓼科が、家族のフィーリングにあい決まりました。でも南山を転校することは考えられなかった。単身、名古屋に残り、最初は八事日赤のそばに、後半は中京大学のそばに、朝夕の食事つきの下宿を見つけて、そこから通学していました。両親も信頼して認めてくれました」

「一人息子で後継ぎ。大学受験も考えましたが、結局、卒業後は、名古屋今池にある『おばんざい処 大安』という和食店に修業に行きました。親戚がやっている蕎麦処『大盛屋』の2階にある姉妹店ですが、今も、どちらも今池の広小路通り沿いで営業しています」

とはいえ、「プロの板前になるつもりはありませんでした。家業に就いたら板場に入れと言われていましたが、プロの料理人より、プロの経営者になりたいという気持ちが強かった。どんな味覚にするか、どんな趣向にするか、板前に伝えるのがオーナーの手腕と考えています。ですから、修業先を出てくるとき、包丁は人にあげてきました(笑)」。 そんな覚悟の丹羽さんが、一番大切にしておられることは何でしょうか?「よそいきではない料理です。懐石料理の宿ですから、料亭とは違う。お風呂に入って浴衣に着替えてリラックスして召しあがっていただくわけですから、例えば、鮎を焼くとして、美しく盛ることより、火をパチパチいれて遊び心を大切にするとか、器や盛り付けにも心を配ります。そして、なんといっても地元で採れる食材を使います。茅野の名産は寒天、ところてん。岡谷にはウナギもありますが、基本的に、山のもので、海の素材は新しいものを使うことができませんので、使ってもシジミくらいでしょうか。春は山菜、夏は高原野菜、秋はキノコ。冬は板さん泣かせですね(笑)。でも、味覚のみならず、雰囲気やサービス、全てを五感で味わっていただければと思います」


テラスの広葉樹もまだ夏の装い (9月8日取材時)       藍染ギャラリー


錦秋の「たてしな藍」


ダイニング+露店風呂付の和洋室         野遊び貸切露天風呂
画像5点 「たてしな藍」さまより

「たてしな藍」お食事処「山味庵」で お昼膳「山味料理」を賞味

まずは前菜から。「むかご」と「信州サーモンの燻製」が、起き上がりこぼしのように刺されている。「むかご」は山芋の赤ちゃん。あしらわれているのは「食用鬼灯(ホオズキ)。ホオズキは、日本では鑑賞用として知られているが、ヨーロッパなどでは食用として栽培されている。蓼科の店頭でも時折見かける。香りはほんのりと優しく、口に含むとなんともいえず独特で濃厚な甘酸っぱさが広がる。

続いては「お椀」。 椎茸と銀杏煎餅。海老のすり身が傘に練り込んである「うらじろ椎茸」と銀杏をつぶして煎餅にしたもの。柔らかく、口にいれるととろけるようだ。いずれも出汁のよく効いた清々しい一品。

三品目は「お造り」。さくら鱒の昆布〆と湯葉。山葵醤油で食する。さくら鱒はサケ科に属する魚で、海の魚でもあるが、産卵するために遡上するのだが、ずっと河川に残留するものがいる。それが、ヤマメという渓流釣り愛好家の垂涎の魚である。山多き信州の渓流はその釣りのメッカでもある。薄作りにされた桜色の身は、脂が乗ってまるでトロのようだ。

焼き物は、「特選牛の朴葉焼き」。角切りの牛肉と、野菜は椎茸、万願寺唐辛子他。朴葉の香りと辛い味噌の絶妙のアンサンブルが更に肉の風味を引き立てる。

煮物は、朱い大きな椀に盛られた「信田巻き」と「冬瓜葛包み」。薄醤油で品よく焚かれた油揚げ、信田は関西地方では、信太とも書くが、発音はシノダだ。揚げで巻いた中には、トロっとした魚のすり身が入っている。冬瓜の葛包みは、一見、葛餅風で、葛餅の中身は餡子だが、これは冬瓜。

そろそろ終盤に入り、揚げ物は「東寺巻き」という一品。胡麻豆腐を湯葉で巻き、油で揚げた天ぷらであるが、サクッとした食感と熱々の胡麻豆腐の濃厚な旨みが絶妙である。

最後のご飯は、「乾燥シジミをのせたお茶漬け」。だし汁をかけて食する。香の物は「野沢菜としば漬け」の二種盛り。

全体には、「京風」を感じさせるのであるが、食材は信州の季節の素材をふんだんに使って、口いっぱいに高原「蓼科」を感じさせる料理であった。 デザートは、桃のシャーベット。最後まで品の良い料理であった。

「物言わぬ空間にも おもてなしの心」

素材×器×料理人=美味

「この春、先代の頃から25年勤めてくれた板前に変わって、新しく板場が変わりましたが、献立から盛り付け・器に至るまでを考えるのが自分の務め。その要求に応えてくれるのが板さんの仕事。リーマン・ショック以降、お客さまの求めるものにも変化があります。父の代から、変わらずにいらしてくださるお客さまもいらっしゃいますが、父と同じことを踏襲するだけでなく、時代と共にお客さまの喜んでくださることを求めていきたい。クレームを恐れずに、ひとりでも多くのお客さまに喜んでいただけるよう、当り前のことをする中にも喜びを見出していきたい」

名古屋修業時代に出逢った、当時、愛知県南知多町長のお嬢さまだった奥さまが、今は、女将として、二代目を支えます。名古屋を離れて20数年。「今は名古屋を素通りして、妻の実家のある知多半島に行ってしまいますが(笑)、時折、名古屋からのお客さまから南山のことを伺うと、とても懐かしい」。この日、「たてしな藍」で、男子部卒業以来、50年ぶりの再会を果たしたS18の堀江陽平Webメンバーと茅野在住の中村淳さんと3人で写真に収まると「先輩たちと並んでいることが、とても不思議な気持ちです」と、感慨のメッセージをくださった丹羽オーナーに、温かな人柄と親しみを感じました。

「たてしな藍」の客人は、関東圏からが約50パーセント、残り半分は、関西と中部圏からだそうですが、信州に住む同窓生はもちろん、これからも多くの同窓生が「たてしな藍」を訪れることでしょう。

丹羽オーナー(S36) 堀江陽平web 委メンバーと 中村淳さん(共にS18)

「蓼科人(たてしなびと)になる」

この夏、日本橋三越を出発した「プレミアム・クルーザー」のツア―客が「たてしな藍」に集いました。日本橋三越が所有する日本に2台しかない豪華バスで行く「景色と味覚と温泉を堪能する一泊旅」の企画だそうです。クルーザーの定員はわずか10名。企画の日本橋三越ツーリストによれば、「全国で2台、定員10名という数に限りのある企画ですから、ネット販売もしておりません。このクルーザーで行く旅は、厳選された場所のみに限られますので、目的地のお宿やホテルは、人気や実績を加味した上で決めさせていただいております」とのこと。奇をてらわない「たてしな藍」の野趣あふれるお料理と、サービスが、都会人の五感に響くからこそ選ばれたのでしょう。ここでは、時がゆったりと流れます。野鳥のさえずりに目覚め、真夏でも冷涼な空気の中、木立の葉音に風を感じます。天然の湯に心身を解放し、大地の恵みの食材を味わう。自然の精気が全身を恢復させてくれます。美しい自然と恵みと共生する「たてしな藍」は、ここを訪れた人すべてを「蓼科人」にしてくれます。
(文と写真 堀江陽平・塩野崎)

たてしな藍

長野県茅野市蓼科高原横谷峡
TEL:0266-67-5030 FAX:0266-67-4647
HP http://www.tateshina-ai.co.jp
FB https://www.facebook.com/tateshinaai

電車の場合のアクセス
東京から茅野   中央東線特急しなの号  2時間20分
名古屋から茅野  中央西線特急しなの号  3時間 (塩尻で乗り換え)

茅野からメルヘン街道バス約30分 またはタクシー約20分

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