2014/8 (株)くすむら/ 豆腐懐石くすむら/ 味匠くすむら – Nanzan Tokiwakai Web
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タウンぶらぶら歩きTown BURABURA Walking

南山タウンに広告掲載されているお店や会社の訪問記

2014年8月6日

2014/8 (株)くすむら/ 豆腐懐石くすむら/ 味匠くすむら

和食ブーム到来。日本の食文化が世界遺産に登録され、益々、世界の関心と人気を集める和の食材ですが、大正3年の創業以来、お豆腐の美味しさを追求してやまないお豆腐店があります。豆腐店を開業して今年で100年を迎える「株式会社くすむら」です。今や、「お豆腐のくすむらさん」といえば、名古屋で絶対的な味と食の安全を誇る「お豆腐」の「ブランド店」になりました。今回は、専務取締役の柘植勝介(かつすけ)さん(S26)に、「豆腐懐石くすむら」でお話を伺いました。


「(株)くすむら」 専務取締役 柘植勝介さん S26

名古屋市東区。外堀通りと国道19号線の交差する平田町信号の西角。この一角に、「(株)くすむら」の心臓部である「豆腐工場」と、できたてのお豆腐を販売する「むかしづくり豆腐処 味匠くすむら」、そして、そのお豆腐を基本にしたコース料理を提供する「豆腐懐石くすむら」が在ります。


豆腐懐石 くすむら 名古屋市東区飯田町56

外の入り口から店内への玄関までは、京都の料理屋を彷彿とさせる石畳の細い路地が続く。突き当たりに、プロジェクターで投影した緑の中に爽やかな水を湛えた象形文字のような意匠が浮かび上がる。その文字は、もちろん、「とうふ」の「と」。

店内は、プライベート感ある個室中心で、お座敷風にしつらえてあり、通されたのはこじんまりとした4人用のお部屋。

豆腐懐石 くすむら お昼席「豆腐御膳」


ぐい飲みのような器に出来立ての豆乳。そこから、すべてのコースが始まる。人肌の温かさで、口に含むと大豆の香りと味、そして甘みが いっぱいに拡がる。大豆そのものの味だ。

続いて、「くすむら」定番の「朧・おぼろ豆腐」。真っ白な、つきたてのお餅のよう。「まずはそのままで」と、塗りの小さな匙で一口すくい取って口に入れる。豆乳の口取りとはまた違った、まさに豆腐そのものの味わい。次に「藻塩」を少々振りかけて・・甘みがグンと拡がる。そして、さらにポン酢で。いずれも、豆腐の旨みをしっかりと引き出している。

「豆腐懐石くすむら」では、昼席4コース・夜席5コースのすべてで、 「朧・おぼろ豆腐」のおかわりが出来ます。これまでの最高記録は「おかわり4回」
「豆腐」は、大豆を蒸して絞った大豆の汁「豆乳」に、「にがり」を入れて凝固させたものですが、固まりかけ直前に、笊(ざる)に入れたものが、「おぼろ豆腐」。「寄せ豆腐」とか「蒸し豆腐」とか呼ばれることもありますが、製法は同じだそうです。ちなみに、凝固直前に、型箱にいれて固まらせると「絹ごし豆腐」、大きな桶で穴の開いた型箱にいれて重しを置いてできるのが「もめん豆腐」です。

続いて、お正月のお節のような三段の重が運ばれてきました。お昼の人気メニュー「豆腐御膳」。

重箱は、玄関アプローチと同じ「と」のロゴが書かれた和紙に包まれている。ひも水引きにさしこまれた黒いお箸は、使用済みの竹箸を炭で焼いたもの。魔除け・脱臭効果もあり、「お土産にどうぞ」と。

一の重:青唐、椎茸が添えられた胡麻豆腐の天ぷら。胡麻豆腐はとろりとしてまったり、ふくよかな味。


二の重:鱸と汲み上げ湯葉のお造り。夏の魚「鱸」今最も美味しい時期、湯葉との相性もピッタリ。

三の重:焼き那須の利休寄せに、湯葉の真丈餡かけ。作り立ての湯葉の美味しさを満喫できる。そして、大豆たんぱくの唐揚げに豆乳こんにゃく素麺。ご飯物は、白雪、本日の炊き込みご飯、そしてちりめんご飯の3種類の中で選べる。お味噌汁は、三州味噌仕立そして香の物。


デザート:黒豆ぜんざいと白玉風の蒟蒻。蒟蒻はまるでワラビ餅のような舌触り。さっぱりと清々しい。

まさに精進料理。ヘルシーではあるが、これでお腹は一杯である。「豆腐懐石くすむら」のどのコース・メニューも、カロリーは1100から1200キロ。保健所の調査でも、「健康食のお墨付き」をいただいているそうです。

3代目・父・柘植義雄氏も男子部ご卒業(M06)

現在、「(株)くすむら」4代目は、勝介さんの兄の惠介氏。もっぱら職人気質のお兄さまは、今なお、豆腐作り一筋。次男の勝介専務が、営業・企画をうけもって、まさに、当代「くすむら」の両輪を、製造と戦略で担うご兄弟ですが、この二人の兄弟と、「豆腐屋」魂を育てあげた立役者こそが、先代でお父上の故・柘植義雄氏です。

3代目の義雄社長は、お豆腐つくりに愛情をこめた方で、豆腐組合の会長も務められました。大正3年、三重県楠村生まれの創業者が名古屋で始めた「楠村屋商店」のお豆腐屋を、2代目から受け継ぐと、徹底したこだわりの素材と昔ながらの製法で作るお豆腐を、名古屋市の公設市場や私設市場などでも販売、八百屋・料亭などに納品するなど販路を拡げました。職人・経営者としても一徹ですが、後継者育てにおいては、なかなかの戦略家でいらっしゃいます。

というのも、今年1月にお亡くなりになった義雄氏も、男子部のご卒業(M06)。「往年のコメディアン・南利明さんの1学年下」の回期だそうですが、二男一女のお子さまのうち、「どうしても、ひとりは南山に入って欲しい」との強い思いから、白羽の矢をたてたのが、次男の勝介さん。「地元の中学には、野球部はないぞ。南山には野球部がある」という策略で、父の思惑通り、野球好きの勝介さんは、男子部に入ります。大学卒業まで、「豆腐屋にはならない」と思っていた気持ちも、策士の父上にかかっては、難なく誘導変更させられ、オイル・ショックの就職難もあって、1977年、愛知学院大学経済学部卒業と同時に、家業に入ることになりました。

豆腐は、元来、朝、できあがったものを、お豆腐屋さんが、行商よろしく「とうふぅ とうふ とうふぅ」と声を掛けながら、家々を回っていました。また市場などにも必ずお豆腐屋があり、冷たい水の中に入っている豆腐を、一丁、二丁とすくい上げて貰い、買い求めました。

勝介さんが家業に入られた頃は、まだ、そんな作り手の顔を見せながらの対面販売が主流でしたが、時の流れと共に、流通も変化し、市場からスーパーへの移行が始まりました。豆腐業界もスーパー販売に力を入れ始め、入社仕立ての勝介さんもお父上に「うちもスーパーへの納入を・・」と進言しました。しかし、先代は、頑としてスーパーへの出荷に首を縦に振りませんでした。理由は、スーパー販売は、まず価格が叩かれる、一つ当たりの単価を安くするには・・お判りですね、材料その他に影響を与えるに決まっているからです。「豆腐の質を落とすことは、絶対にイカン!」と、かたくなに、ブランド「くすむら」の豆腐を守り続けることを信条としました。同業者からも異端視された時もあったそうですが、ブランドとは、時代の波や社会の変化に流されず、大切と信じるものを守り続ける誇りでもあるのでしょう。

入社後の勝介さんが、お客さまとの対面販売を大事に続けた中区大須赤門の中公設市場では、「美味しいお豆腐が有る」という口コミが広がっていきました。デパート参入の実力と人気を備えながらも、すでに、他者のお豆腐屋さんが、既存のデパートには入っており、先代の「他人さまのところを荒らしに行くな」との厳命で、他社の出店のない、栄のパルコに納品することを決めました。しかし、当時のパルコに食品売り場があったとはいえ、若者のファッションビルのイメージが強いパルコでは、豆腐購買客層には結びつかず、2年程で撤退。しかし、長年の信頼と実績で、今では、松坂屋、JR高島屋のいわゆる「デパ地下グルメ」のメイン・コーナーに「くすむら」のお豆腐・大豆製品のお惣菜が並んでいます。先代が猛反対したスーパー出店も、「くすむらコーナーを設けていただければ・・」の条件付きで、アピタ・イオン・フランテなどに納品。質と価格を守り続けています。


平成5年、4代目が代表取締役に就任し、商号を、「楠村屋商店」から、わかりやすい「くすむら」に変えました。畑の肉といわれる健康食品の大豆の美味しさをこれまで以上に追求し、豆腐の品質をより高めていこうとの強い決意からです。さらには、平成9年、「製造」「販売」『飲食」まで、自社提供を展開するため、「豆腐懐石くすむら」をオープンさせました。隣接の工場で、できあがったばかりのお豆腐をメインに、季節の食材を豊富に使った本格的な懐石料理です。 大阪の料亭「神田川」で長く修行を積んだ料理長を中心に、月に一度の食事会で、「季節感に欠ける」・「メイン料理になりにくい」豆腐のウイークポイントに対処した献立つくりなど研究に余念がありません。


料理長の師である神田川俊郎さんからの額が飾られていました

味のヒミツは、なんといっても、大豆と水。くすむらでは、北海道産の「大袖の舞」と愛知弥冨産の「福豊」の大豆をブレンドして、国産100%のお豆腐を作っています。甘味と糖質の多い北海道産だけでは、固まり難いため、苦汁(にがり)を固まらせるタンパク質を多く含んだ弥富産と混ぜ合わせます。水は木曽川の伏流水をもとにした井戸水を使います。

「くすむらさんのお豆腐」は、決して安くはありません。今、スーパーなどでは、1丁、数十円という豆腐も売られています。一見、同じでも、安い輸入大豆を使用し、機械的に大量に作られる豆腐も横行しています。アメリカ・中国・ブラジルからの輸入大豆の価格は、国産大豆の4分の1。また、豆乳を固めるのに必要な凝固剤も、天然の「にがり」とは異質の、化学的に作られた「すまし粉」を使用すると、薄くても固まるため、60キロで1,000丁もの豆腐ができますが、そうしてできた豆腐の濃度は、8から10度。「くすむら」の豆腐が、13.5度なのと比べれば、その差は歴然です。同量の苦汁をつかった「くすむら」製は、300丁から400丁しかできません。

「くすむら」のオカラは、真っ白でサラサラです。

輸入大豆は、やや色が黄ばんで、豆のヘソの色も黒いそうですが、国産大豆は、白く、豆のヘソまで白いため、「くすむら」のオカラも、粉雪のようです。

お土産にいただいたこのオカラで炊いた卯の花は、いつにも増して、しっとりとできあがりました。それが、素材の良さというものなのでしょう。

保健所の基準では、国産大豆を3割以上、使っていれば、「国産豆腐」と認定されるそうです。「くすむら」の豆腐は、もちろん100パーセント国産大豆使用です。

昔づくり豆腐処「味匠 くすむら」

勝介専務は、「くすむら」が「くすむら」であるための、もう一つの要素に、「従業員」をあげました。


味匠 昔づくり豆腐処 くすむら(販売店) 名古屋市東区橦木町3-79

「豆腐懐石 くすむら」の一本北東の辻にある「味匠 くすむら」では、雨の日も客足が絶えません。昔ながらの「豆腐屋さん」の活気を呈しています。接客するのは、「くすむら」5店舗全てに配属された「全国区豆腐マイスター」の称号をもつ8人の「豆腐のプロフェッショナル」。「豆腐の良さをお客さまにお伝えするのが、君たちの仕事です」と、日々、勝介専務は、従業員に伝えているそうです。一丁300円、350円と、決して安くはない「くすむら」のお豆腐、その良さを、お客さまに納得していただく使命が、従業員ひとりひとりに課せられています。この日も、定番のお豆腐、湯葉、厚揚げ、お惣菜のほか、「限定・夏の恵方巻」が並んでいました。「節分は、季節を分ける節目です。立秋前日の今日、湯葉の入った恵方巻をお召し上がりください」。といって、決して、押しつけがましくはありません。仕事への自信と満足を備えたプロの接客は、本当に、心地よいものです。


豆腐マイスターの日高みどりさん    恵方巻きの説明をしてくださった木全夏美さん

「豆腐屋の朝は、早い。製造部門は夜の11時から徹夜の作業。製造・販売・飲食と、年中無休の24時間体制です。月に1度のゴルフがせいぜいの楽しみですが、南山生というと、どこかで誰かが懇意にしてくれる。ありがたいですね」

「豆腐屋にはならないと思ったけれども、100年の重みを感じて、ようやく、この頃、つぶせないぞ!と思うようになりました(笑)」。工場の職人さんには、4代目のご子息も加わり、製造・販売・飲食の「3本の矢」が「味匠くすむら」の味を飛翔させています。

(取材 堀江 塩野崎)

味匠 昔づくり豆腐処 くすむら(販売店)
住所:名古屋市東区橦木町3-79
電話:052-931-1456
FAX:052-936-6462
営業時間:10:00〜18:30(日祝10:00〜17:00)

豆腐懐石 くすむら(飲食店)
住所:名古屋市東区飯田町56
電話:052-937-0345(要予約)
昼の部 平日 11:00〜14:00(LO13:30)
土日祝 11:00〜14:30(LO14:00)
夜の部 17:00〜22:30(LO20:30)
定休日:豆腐懐石くすむら 第1・3月曜日(祝日の場合は営業、翌日休業)

交通手段:下鉄桜通線高岳駅徒歩9分
お車が便利です:国道41号「東片端」交差点を東へ400m
国道19号「平田町」交差点を西へ100m 駐車場有

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