vol. 105 岩田 千江子(G25)「雑感~一時帰国に寄せて~」 – Nanzan Tokiwakai Web
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2015年11月28日

vol. 105 岩田 千江子(G25)「雑感~一時帰国に寄せて~」

 “おかえりなさいママ!日焼けしたね。なんか海外の免税店にいる日系人のおばさんのような雰囲気になったね!” 約1年4ヶ月ぶりにアメリカから一時帰国した私を羽田で出迎えてくれた娘が、開口一番、私を見てそう表現した。
ミシシッピ州は日差しが強く日焼けをそうそう気にしていられない。きっと、アメリカに良く馴染んできたね、という意味の挨拶だったのだろうと理解し、久しぶりの日本と日本の人々にわくわくしながら2週間の滞在が始まった。私の気づいたことを勝手気ままに述べることをお許しいただきたい。
 
 何といっても羽田空港のきれいなこと。清潔という意味でもそして整然としているという意味でも。ミシシッピの友人たちの多くは日本はいつかは訪れたい憧れの国であると言ってくれているが、彼らがもし今、自分と羽田に降り立っていたら、きっとさぞ感激するだろう。日本の玄関としては合格点なのではないだろうか。例えば、ハイテクトイレには本当に驚かされた。日本のモノは信頼度が高い。ミシシッピでも尊敬と憧れをもって、何でも喜ばれる。そういう信頼と尊敬の念を持って見られているということを日本の人たちはどれほど気づいているだろうか、などと思う。永い時をかけ日本が築き上げてきた信頼と尊敬というかけがえの無い価値を・・
 
 空港、都内そして帰宅した名古屋までの道中、深刻そうに見える表情をしている多くの顔を見た。車中で体か触れ合っても、言葉さえかけず、スマホの向こうにいる相手とコミュニケーションをとっているのか、目の前の人には興味を示さない。日本特有の光景ではないとは思うが、やはり大きな都市の共通した特徴的な光景ではないだろうか。
 
 日本では稲刈りが終わり、刈り取られた稲が干してある景色は平和な瑞穂の国の象徴のようで心が休まる。ふと、綿花畑の広がるディープサウスの景色と重なるが、ディープサウスはどこを見るにつけても、奴隷制度、南北戦争の歴史を抜きには語れないことを思うと、日本は何と穏やかな国だろうと感じる。
 
 帰宅するまでの約1時間半、のぞみ号の中ではきっと社員旅行なのだろう、整然としてたいそう礼儀正しいグループがいた。そうだ、これも日本独特の文化だ。
規則正しく、礼儀正しく、でもリラックスしている風に楽しそうな団体?おそらく色々な国のグループというものの特徴を描写したら、間違いなくこれが“日本”のグループのステレオタイプだ、などと納得する。“個”ではなく“群れ”社会で大きな成果をあげる、そういった美学を持った文化が日本の文化かな、と感じる。
 
 今年の紅葉は色づきが例年より劣っていると伺った。残念には違いないが、その分ミシシッピと同じような紅葉の具合で、また気温もむしろミシシッピより暖かく感じるくらいだ。そんなこんなでミシシッピに思いをはせる毎日でもあり、その意味で娘の言った私が“日系のおばさん”という表現は言い得ていて思わす苦笑してしまう。
 
 
 
岩田 千江子 プロフィール (G25)
 
南山大学外国語学部 イスパニヤ科卒業
中日新聞社 (財)名古屋国際センター勤務後、
幼児児童英語教師 (財)AFS日本協会尾張支部副支部長を経て
現在、 国際交流基金日米センターと米国ローラシアン協会の運営する
Japan Outreach Initiativeのコーディネーター
 
ミシシッピ州立大学人間科学学部を拠点に日本を紹介する活動を、
2014年8月~2016年8月までの2年の任期で行っている。
日本を知らない地域での活動が主体で、主に大学内、幼稚園、小学校、中等教育学校、
地域の図書館、公民館など。対象は幼児からシニアまで。プログラム内容は日本の
折り紙、着物、茶道、華道、ファッション、ビジネスマナー、お話の読み聞かせ、
書道、風呂敷、日本の生活一般、学校生活など多岐にわたる。
 

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