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2016年8月28日

vol. 113 大久保 洋子(G15)「最近感じたこと」

 およそ20年間、規模の大小に関わらず、多くの経営者にお話を伺って、経済誌に
記事を書く仕事をしてきました。中には消えてしまった会社もありますが、多くの
経営者は社会的成功者です。そこで彼(彼女)たちに何かしらの共通点があるのでは
ないかと、振り返ってみたいと思いました。
 
 経営者の資質、成功の秘訣を書いた本、立志伝などは書店に山積みです。内容は
経営者の先見性、開発力、時代性、発想力などがいかに大切か、彼らがいかに優れて
いるかです。会社経営に一番大切なことは利潤追求ですが、それを追求するあまりの
事件や事故は、毎日のように新聞紙面を賑わします。
 
 利潤を追求しながらも、多くの人々に支持されてきた経営者たちの考え方、生き方に
興味が湧きました。
 
 共通しているのは、どなたも、物腰が柔らかく、頭が低いということ、つまり
権威主義は見られず、話せる範囲を本音で語っているように感じられました。
理由の一つに、創業者であっても、継承者であっても、皆それぞれの谷間を経験
してきたことがあります。谷間というのは、自然災害、不景気、銀行の融資拒否、
取引(仕入・納品)先との不和、機器の故障や人間関係の問題など自社内の不都合
等々のことです。
 
 様々な危機を乗り越えた経営者たちには、その時助けてくれた人々や巡り合わせに
自ずと感謝の気持ちが人一倍深まります。経営が順調な時からあらゆる人間関係を
大切にするようになります。
 
 一方、会社のトップになるような人には、元々人を惹き付ける魅力が備わっている
とも思われます。手弁当で応援してくれるような人が多ければ多いほど、いざという
時、大きな力になってくれるでしょう。つまり人気者ということです。否定
できません。しかし『人気』は流動的でつかみどころのないものです。一晩で
手のひらを反して反撃に転じるものでもあります。何かしらの努力なしには保ち
続けられるものではありません。為政者にも悪い例があります。経営者であり続け
られたはずの人々、明智光秀、石田三成、最近では舛添要一など。
 
 彼らの不幸は、人を信じる気持ちの欠如、周りの人を大切にする気持ちの欠如です。
感謝の気持ちを忘れて自分の力だけで危機を乗り越えられたと考える人は孤立して
ゆきます。
 
 毎日「ありがとう」を繰り返し言って幸せを呼び寄せましょう、と教えて
くださったのは八月初めに亡くなった竹田和平さんでした。従業員や取引先の
方々に対する感謝の言葉を社是にしている経営者は数えきれません。社会的地位を
確立しても尚、感謝の気持ちを忘れず、人々に大切にされている経営者たちの
共通点は、自分の立場に『畏れ』を知る人々ということです。
 
 『感謝』と『畏れ』というフィルターを通して人を見ると、それを心底に
抱いているかどうかで、成功するかどうかの分岐点が分かるような気がします。
 
 秋の夜長に、個々の例を考察してみたいと思います。
 
 
 
大久保洋子さん(G15)プロフィール
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