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2017年6月28日

vol. 121 小川 恵子(G37)「漢方医学の魅力」

 久しぶりに南山女子部の同級生のAさんに会った時のこと。「最近、疲れやすくてイライラしちゃうから、子どもにも機嫌が悪くて、いやになっちゃうんだよね」と相談を受けました。簡単に脈を診て、合いそうな漢方薬をアドバイスしました。
それからしばらくして、彼女からメールをもらいました。「体調が良くなって子どもにも優しくなれるようになった。よく考えてみたら、高校生の頃、母親がとても機嫌が悪くてつらい気持ちになったんだけど、あれは思春期と更年期のぶつかり合いだったんだね。その頃、漢方を知っていれば良かった」。
 
 思春期と更年期が一緒にいたら確かにたいへんだ。患者さんにもその年代が多いし、親子で漢方治療を受けると早く良くなる場合が多いのは、そういう理由だったのか、と思いました。私自身にも大変勉強になる意見でした。
  
 漢方医学は、1500年以上の歴史を持つ日本の伝統医学です。古代中国医学にルーツをもちますが、日本で独自に蓄積された臨床経験をもとに、独自の理論が形成されています。漢方医学には、湯液(漢方薬を使った治療)、鍼灸、そして推拿(すいな・マッサージのこと)が含まれます。
  
 漢方医学的診察は、顔色を診てその人の状態がわかる、などの本能的な感覚情報の集大成です。適切な漢方医学的診察法で診察経験を重ねれば、観察力や判断力を養うことができるのです。漢方医学的診断には「四診」という4つのステップがあります。
視覚による「望診」、聴覚と嗅覚による「聞診」、患者から病状や自覚症状を聴く「問診」、そして患者に手を触れて診察することによる「切診」の4つです。これらの診察を元に診断し、漢方薬を決めます。
  
 日本では、保険診療で148種類のエキス製剤(煎じた漢方薬をフリーズドライして粉末や錠剤、カプセルにしたもの)も処方できます。ですから、同じように疲れた人でも、その人の状態によって処方する漢方薬は異なります。
  
 西洋医学と漢方医学の関係は、一言でいえば「経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の関係」です。漢方医学は、身体や心に起きている事象を、西洋医学とは違う角度、違う切り口で眺めることができます。そのため、西洋医学に漢方医学を併用することの価値が再評価されています。
  
 最初に挙げた例は、西洋医学的には問題になりませんが、漢方医学的な目で見ると、心身のバランスや家族関係は重要な問題です。漢方医学は心と体を切り離さず、環境も含めた患者さん全体を診るところに一番の魅力があると言えるかもしれません。
  
  
小川恵子プロフィール
  
愛知県名古屋市生まれ
平成 2年 南山高等学校女子部卒業
平成 9年 名古屋大学医学部卒業
平成 9年 名古屋第一赤十字病院にて外科研修
 
この頃から、救急外来で小青竜湯や葛根湯などの漢方薬を使い始めました。
その後、名古屋大学小児外科に入局し、小児外科専門医を取得、名古屋大学大学院医学研究科博士号取得しました。
  
小児外科疾患の術後に漢方が効果的であったため、2年ほど勉強するつもりで、千葉に国内留学することにしました。
  
難治症例に漢方薬が非常に有効であったこと、漢方医学は2年で習得できるものではないとわかったため、さらに勉強と研究を継続することにしました。
  
そろそろ小児外科医に戻ろうと思っていたところ、金沢大学附属病院に漢方外来を開設したいというお誘いを受け、平成23年 金沢大学附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科 和漢診療外来 特任准教授として赴任しました。
  
開設4年後に、独立診療科として認められ、
平成27年 同 漢方医学科 臨床教授 現在に至っています。
  
指導医・専門医
日本東洋医学会指導医、日本外科学会専門医、日本小児外科学会専門医
 
その他
日本漢方生薬ソムリエ協会理事、eBIM理事、日本東洋医学会国際委員会委員長
日本小児外科学会評議員、日本血管腫血管奇形学会評議員
日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート

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