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2006年12月7日

vol. 17 田中 益子(G19)「もの、モノ、物」

素晴らしく好調な景気を更新している日本ですが、残念ながらアメリカ式消費型社会になってきています。ウチの矯正歯科医院で、患者さんからよく質問されるのは
「装置は何色? 歯ブラシは? 歯磨きペーストは? 電動歯ブラシは?」という「モノ」に関することです。
よその一般歯科医院でも、定期健診にいらした子供の患者さんのお母様に「今のところ問題になるところはありませんよ」と申し上げると、「なーんだぁ・・・もうこの次の定期健診は止めとこうかなぁ」というお顔をなさるそうです。逆に「虫歯が見つかってしまったので治療しておきましょう」と申し上げると、「ホッ、来た甲斐があった(ヨカッタ?)」という風な表情をされる方もいらっしゃるとか。
歯科の定期健診や指導を受けたうえで自宅で実行して頂けば、「高いデンタルグッズを買っとくだけ」の何十倍もの効果がもちろんあります。本当にモノに頼る、モノの大好きな日本人だなぁと思ってしまいます。
歯科医の超過剰時代で、歯科医の仕事が減ったことを嘆く歯科医もいらっしゃいますが、受診される患者さんと歯科医の双方が予防のための定期健診に熱心になれば、歯科医の仕事は決して減りません。昨今医療は「キュアーcureからケアcareへ」と言われるようになりましたが、ケアのためには関心をもって観察して、何が必要かを考える「関・観・考」3つのカンが必要なのではないでしょうか。ケアというと即セルフケアと思われてしまって、できない・面倒だからやりたくないと思われてしまうかもしれません。しかし、どこかまでは自分で、それ以上はプロの手に依る、という全プロセスも含めてケアだと考えれば各人の快適なケアメニューというものがあるのではないかと思います。
医科の領域でも薬や検査が、患者さんの「ものたりな〜いような表情」に押されて処方されることもあるようですし、介護の領域では借りたり買ったりした器具類がうまく使われないで放置されることが多々あるようです。しかもコンピューター社会ですので、放置されていることが発覚すると、使われない事情などは飛んでしまい単に「不要」というカテゴリーに整理されて、本当に必要な人の分まで「見直し」の対象になり、ともすると理不尽な法律を成立させてしまうことにもなりかねません。
モノを第一に考えないことは医療に限らず、何にでも通じることだと思います。人を育てる時でも、十分な関心をもって観察すれば愛着が湧いてきて相手の立場で考えてあげられますから、モノで釣らなくても自然に愛情の込もった接し方ができます。
モノの消費が右肩上がりの社会とは少し距離をおいた暮らしを始めるのは如何でしょうか。

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