vol.172 高野 勢子(G26)「モロッコへの旅」 – Nanzan Tokiwakai Web
  1. HOME >
  2. メルマガコラム

メルマガコラムMail Magazine Column

過去に配信した「常盤会WEBメルマガ」の記事を掲載しています。

2022年7月9日

vol.172 高野 勢子(G26)「モロッコへの旅」

 コロナ禍で2年半ぶりの海外出張は、農業関係の通訳の仕事でモロッコへ。なんとかワクチン証明書や帰国時に必要となるアプリを用意、PCR検査も終えて、さあ出発。 

 モロッコへはトルコのイスタンブール経由で行った。現在ヨーロッパでは第二次世界大戦以来の戦争がおこり、日本はウクライナ側についているため、ロシア上空は飛行できず、モンゴルやカザフスタン上空を飛んで、イスタンブールへ向かう。
 
 イスタンブールはウクライナとは黒海を隔てて反対側にある。占領されたクリミア半島やセバストポリも近づくとフライト経路の地図上に現れ、ちょっと緊張する。近代的なイスタンブール新空港で5時間を過ごし、モロッコ便に乗った。
 
 モロッコはもとフランスの植民地で、誰でもフランス語をよく話す。学校でもフランス語で授業をしているとのこと。しかし、近年、英語を話す人が多い。自国語のアラビア語は音域が広いため、子どもの頃から耳が訓練されていて、耳から聞いて割と簡単に覚えるようだ。
 
 初日はカサブランカをそぞろ歩きしてみた。巨大な椰子の木の街路樹があり異国情緒満点。緑も多く、ブーゲンビリアや紫のジャカランダが満開で、花が豊かな場所との印象だ。途中、道に迷い、通りがかりの家族にわかりやすいところまで連れて行ってくださった。
 
 また、イスラム教の国でもあるが、カトリック教会もユダヤ地区もあり、いかにもユダヤ人という、帽子、巻き髪、黒い服装の男性集団もおり、宗教的にも自由で、多様な信仰が受け入れられている、と感じる。
 
 カサブランカの気候は冬の最低気温が10度、夏の最高気温は27度と快適で、アフリカは夏の東京より涼しい。スキーもできるし、砂漠もある、気候も風景も多様だ。イスラム教の国なので、休みは金曜日かと思ったら土日が休みだそうだ。
 首都はラバトで、政府の機関が集中している。ラバトまではカサブランカから車で2時間ちょっと。海岸には、海水浴に来ている家族連れが沢山いる。モロッコは地中海と大西洋に面して沿岸が長い。ラバトには緑豊かな庭が綺麗な大きな屋敷が立ち並ぶ。城壁に囲まれた賑やかなラバトのメディナ旧市街地を含め、世界遺産に指定されている。
 
 私はタジンという煮込み料理が大好きなのだが、今回は鶏肉と野菜をシロップ漬けしたレモンで煮込んだ美味なタジンをいただいた。次回は是非クスクスを食べたい。
クスクスというのは小麦で作った、細かい粒のようなパスタを煮込みソースであえた料理だが、ここでもまた、戦争の影響が深刻だった。モロッコは小麦をウクライナとロシアと両方から輸入していた。それが、いずれからも輸入できなくなっている。
 
 ドイツやフランス、日本はロシアから天然ガスを輸入していたが、隣国に侵略したロシアへの経済制裁としてガス購入を縮小した。しかし、制裁を課す方が困っている。小麦不足はそれ以上に深刻かもしれない。現在、各国で、コロナと戦争の両方から、食糧の自給自足を促す動きが見られる。先日、自分の食卓をながめ、食料を輸入しなかったらどうなるかと考えた。バナナも胡麻もオリーブオイルも紅茶もなくなるのは寂しい。それ以外にも多くの食料を各国から輸入しているであろうから、食糧不足を避けるためにも、貿易相手とは仲良くしなくてはいけないなとつくづく思う。
 
 モロッコの人はお風呂にもよく行くという話も聞いた。これは日本との共通点。オイルを身体につけて、蒸気で身体をリラックスさせるのだそうだ。
 
 近代化も急速に進み、先進的な工場もできていて、一足飛びに、最先端の技術を導入している。太陽光や風力の再生エネルギーも既に総電力の4割以上、2030年には5割以上にするそうだ。
 
 今回の旅は短期間だったので、次回はゆっくりいきたい。とはいえ旅行ができるのも、美味しいものが食べられるのも、映画やお芝居が楽しめるのも、平和あってこそ、今の私たちの生活は平和の上に成り立っているのだなと改めて感じさせられる出張になった。
 
 
プロフィール
 1979 南山高校卒業、上智大学仏文科入学
 1984 フランス大使館 勤務
 1990~ フリーの通訳 TICAD首脳会議、G7大臣会合、即位の礼の同時通

メルマガコラム一覧