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2023年12月17日

vol.186 南山高等・中学校 第17代  赤尾 道夫校長先生 「手を広げて祝うクリスマス」

 常盤会の皆様、クリスマスおめでとうございます。
 南山を卒業された皆様はもちろんご存じでしょうが、クリスマスはイエス・キリストの誕生を祝う日です。けれども、世界中でクリスマスをお祝いしているのはキリスト教徒だけではありません。教会に行ったり、お祈りしたりはしなくとも、12月25日が本来どんな日なのか知らなくても、日本でも世界でも多くの人々がクリスマスを楽しく過ごしています。ショッピングモールやデパートに行けば、クリスマスソングが流れる中でクリスマスのプレゼントやごちそうのためにとセールが開催されていますし、家族や友人が集まってあちこちでパーティーを開いて楽しい時間を過ごします。
 
 世界中の子供たちへのプレゼントが入っているサンタクロースの袋のようにイエスは器が大きい方なので、クリスマスなのにご自分の誕生をお祝いしてもらえなくても、人々が幸せな時を過ごすことができていれば、それでご自分も喜ばれるはずです。クリスマスはすべての人のためのお祝いだからです。大人も子どもも楽しんで、キリスト教徒でも仏教徒でもイスラム教徒でも無神論者でも誰でも一緒にお祝いしていい、戦争をしている相手とでも休戦して祝う、というのがクリスマスのあり方です。
 
 まさにこれがクリスマスのメッセージです。普段「私自身の幸せ」のために一生懸命働いて握りしめている手を、クリスマスには大きく開いて、空にして、「誰かの幸せ」のために差し伸べることを大切にします。自分ではなく目の前の人を喜ばせ、その喜びを自分の喜びとします。プレゼントをもらう喜びよりも、贈る喜びの方こそうれしく感じます。
 
 イエス誕生の場面をかたどった馬小屋の飾りつけをご覧になったことがあるでしょう。どんな情景だったか、思い出してみてください。飼い葉桶に寝かされた赤ん坊のイエスは、多くの場合、両手を左右に大きく広げた姿でいます。その手は、母マリアを求めて抱きかかえてほしいと伸ばしている手ではありません。苦しんでいる人・悲しんでいる人を受け入れようと、彼らに近づこう、自分自身を与えようと広げている手です。そしてその手に誘われるように、イエス親子とは面識もなかった羊飼いたちと動物たち、東方からの博士たちが馬小屋に一つに集っています。この新しく生まれる「つながり」こそ、現代の私たちがクリスマスを祝うときにも大切にしたいことです。
 
 学校でよく目にする光景ですが(特に女子の場合)、生徒たちは親しい友だちを見かけると、手を広げてかけよります。友だちから自分の欲しいものを奪うためではなく、友だちへの愛を与えるためです。そのとき手に何も握られておらず、大きく開かれているのは、持っているどんなものよりも大切な相手の存在そのものをしっかりと受けとめるためです。自分自身を相手に与えつくすためです。もし私たち一人ひとりが、その手を家族や親しい友人に対してだけではなく、もう少しだけ広げて差し出せるようになったなら。きっと真の平和に一歩近づくでしょう。
 
 メリークリスマス。皆様とご家族の上に豊かな恵みと祝福がありますように。そしてその幸せが、少しずつ広がっていきますように。

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