2025年6月8日
南山には名鉄と市バスで通った。バスは金山―石川橋の区間がスタンプされた定期券を使っていた。学校帰りに栄の丸善に寄る時は、杁中から50番か71番のバスに乗った。
広路通りを走る71番よりも川名の弁天や竜ヶ池を通る50番のほうが時間はかかるが車窓に変化があって好きだった。
2019年4月から東京で生活することになった。上池袋から小石川まで、池袋を経由、乗り継いで都バスで通勤するべく都営交通営業所でバスの定期券を購入した。久しぶりのバス定期券はプラスチック製で乗車区間のスタンプはなかった。持参人有効で、乗車時運転手に提示すれば23区内の都バス全路線が乗れるというもので、会社帰りの道草が無限に広がる魔法の切符に思えた。
メトロポリスにいることを感じさせる新橋―渋谷間を走る都01、下町情緒の残る上野―千住の上46系統などは初めての東京暮らしの夕方の無聊を慰めるのに役立った。休日には都バス最長路線と言われる王子から新宿までの路線王78にも乗った。都バス定期券は、結局一か月でやめた。便利でお得な車内でも買える一日乗車券のあることを知ったからである。
コロナ明けで混雑も戻り始めた矢先に小石川―池袋間が大幅減便になった。運転手不足などが顕在化したのであろうが、公共交通が置かれた厳しさは利用者に不便を強いる。朝夕の丸の内線は新年度の東山線並に混雑するし、バスだと階段の上り下りが要らないので地下鉄通勤に変える気は起きなかった。
都営地下鉄にも乗車できる共通一日券もバス車内で購入できる。三田線や新宿線は乗り換え、乗り継ぎが便利で、日比谷や新宿に寄り道するときに重宝した。日本橋は都営交通だけでは不便で、メトロやJRを利用したが、バス専用と都営まるごとの2つの一日乗車券を使い分けて都内は移動した。
2023年12月に一宮に戻った。朝晩の通勤からも開放されたが、外を眺められるのが魅力で名古屋市内の移動もバスを使うようにしている。。
数時間の用事でも一日乗車券を買って、空いた時間に南山時代に通学、寄り道した系統を乗る。先頭の席(運転手の左)が空いていて、競合しそうな子供がいなければ、迷わず着座させてもらう。50年の間に路線が変更、短縮されて戸惑うが、車窓の変化に歳を感じ、昔ながらの風景に出会って懐かしさに浸る。
知らなかった路線も魅力的である。数年前に廃止された高速1に乗ることは叶わなかったが、現在の市バス最長路線と言われる緑巡回にもいつか乗ってみたい。
「お客様にお知らせします。都内にお住まいで満70歳を迎えられた方は、都内の路線バス、都電、都営地下鉄、日暮里舎人ライナーが利用できる東京都シルバーパスを購入することができます。詳しいことは都営交通お客様センター電話03-3816-XXXXまたは東京バス協会までお問い合わせください」
都営バス車内で流れるこのアナウンスは、当初聞き流していたが、計算すると2000回以上聞いたことになる(コロナ行動制限がなければその倍以上)。
名古屋在住の同級生がパスを持つ年代になった(一宮在住の私は、残念ながら保有資格がない)。東京都と違って、名古屋のすべての交通機関が使えるようだ。彼らがどんな所に、どんなルートで行っているのか、バスをどれだけ使っているか、機会を作って聞いてみようと思う。
プロフィール
S29 三輪敏紳
一宮市生まれ、在住
岐阜県各務原市、茨城県つくば市、東京都豊島区に居住経験あり