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2025年10月13日

vol.204 熊﨑 智子(G24) 「宇宙から降って来る?! 小惑星から地球を護れ!!」

 皆さま、こんにちは。G24の熊﨑智子です。
SF的なコラムのタイトルですが、明日に明後日に空から星が降って来るわけではありませんのでご安心ください。ただし、いつか…の可能性はありますが。
 
 昔々、私たちの地球を含む太陽系は、大きな天体どうしの衝突を繰り返して形成されました。そのとき残されたチリや岩石などが宇宙を漂っています。これが小惑星です。また、稀に太陽系の外からやってきたものもあります。
 
 地球に人類が誕生して以降は大きな天体の衝突はありませんが、ときどき小惑星による地球への小さな衝突は起こっています。その一例として、約6550万年前、メキシコのユカタン半島に直径「数十km」サイズの小惑星が衝突しました。その地域はさることながら、地球全土にその影響はおよび、恐竜の絶滅の原因にもなったとも言われています。
 
 最近では、2013年2月、ロシアのチェリャビンスクに落下した「10~17m」サイズの小惑星が、落下地点に大きな被害を与えました。その被害の原因は、大気圏に突入した小惑星が大気との摩擦熱でバラバラに弾けて超音速で飛び散り、そのときの衝撃波で建物のガラスが粉砕したからです。
 
 このような話を聞くと小惑星は悪者にされてしまいますが、私たち人類にとって大きな役割も果たしてくれます。JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」に(2010年)、「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」に(2018年) 到達し、それぞれ小惑星のサンプルを採集しました。ここから、太陽系や地球形成の歴史が紐解かれる可能性があるのです。
 
 そして今、注目すべきは直径340mの小惑星「アポフィス」です。2029年4月に地球へ約3万2000kmの距離まで接近し、3等級の明るさで見られます。地球から月までの距離が約38万kmですから、かなり地球に近づくため世界中どこからでも見られます。このときばかりは、お花見よろしく「小惑星見」をしてみませんか? 特に大西洋のど真ん中が観測には最適だそうですので、興味のある方は是非どうぞ。
 
 さて、小惑星は誰がどのようにして見つけるのでしょう。
世界各地の天文台…星や宇宙の観測を目的とした研究者のいる施設で。アマチュア天文家…職業を問わず、天文観測を趣味としている人、学術的貢献を行う人もいます。
 
 また日本には、小惑星や彗星などNEO=ネオ(Near Earth Object) と呼ばれる「地球近傍小天体」を専門に発見と監視をしている組織があります。NPO法人日本スペースガード協会です。
1996年発足、1999年にNPO法人となり、NEOの観測に特化した美星天文台(岡山県井原市美星町) を所有する天文学術調査の研究機関です。NEOについての幅広い研究とその啓発・普及活動も行っています。
 
 2012年に美星天文台に隣接して「美星スペースガードセンター」(BSGC=the Bisei Spaceguard Center)も開設されました。ここの主な所有者は、JAXAのSSAプロジェクトチームです。(SSA=Space Situation Awareness) 簡単に言えば宇宙の今ある状況を把握している施設で、観測業務は日本スペースガード協会が担っています。
 
 NEOは小さければ地域的な衝撃波に対する注意喚起で済みますが、大きいと避難先確保・誘導などに時間を要します。さらに、数十kmサイズの大きさであれば避難どころではなくなります。NEOそのものの軌道を変える試みが必要となり、まるでSFの世界ですね。
 
 しかし、この試みはすでに2022年にNASAが小さな無人探査機ダートを、小惑星デイモルフォス(直径160m) に当てて成功しています。無重力の宇宙空間では、ほんのちょっとした力で容易に軌道が変えられることが分かりました。小さくても大きくても、少しでも早くNEOを見つけ出せば、余裕を持って準備が整えられます。そのためにもスペースガードセンターでは、世界中の目的を同じくする天文機関と協力して365日休まず観測と追跡をしています。
 
 私は本業の傍らこのスペースガード協会に所属しています。宇宙の知識は高校地学レベルもありませんから、研究活動をしているわけではありません。小中学生に宇宙関係のイベントを企画するなど、スペースガード協会の存在と小惑星探査の意義を伝えています。また、天文同好会の大学生たちから、小中学生にレクチャーしてもらうというつながりの場も作ることがあります。ネットで見れば分かることでも、宇宙という題材を通して対面で過ごす時間の質を高めたいからです。
 
 美星天文台は、岡山県井原市美星町の吉備高原にあり、ここは年間降水量が少なく天文観測には適しています。また、「光害防止条例」を出して市民の皆さんが美しい星空を守っています。美星天文台の見学者大歓迎ですので、お近くにお越しの際は、ぜひ一度お立ち寄りください。
 
 
Profile 熊﨑 智子(G24)
・NPO法人日本スペースガード協会 常務理事
・(学) 河合塾 小学・中学グリーンコース理科講師
・名城大学薬学部非常勤講師
・ガイダンスカウンセラー

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