vol. 24 宇佐美 百合子(G20)「エビにあやかろう」 – Nanzan Tokiwakai Web
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2007年8月14日

vol. 24 宇佐美 百合子(G20)「エビにあやかろう」

 日本のお祝いの宴には、必ずといっていいほど”エビ料理”が登場する。その理由を知らないまま、私は単純に「エビは体が曲がっているから、腰が曲がるまで長生きできるようにという意味だろう」と思っていた。
 ところが、日本人が伝統的にエビを重んじてきたのは、そんな表面的な理由ではなかった。
 
 一般に「エビの殻は固い」というイメージがあるが、とんでもない。エビは殻が固くなるとすっぽり脱いで柔軟な体を保ち続ける。冬でも夏でも際限なく殻を脱いで、生きている限り決して固くならない。
 それで、《みなぎる生命力の象徴》として尊ばれてきたという。
 
 縁起物のエビ料理には、古人からのありがたいエールが託されていたのである。
『年令とともに肉体が硬くなることが”老い”ではありませんよ。心に柔軟性がなくなって凝り固まることが老いなのです。エビにあやかってこわばった殻を脱ぎ捨て、生命力あふれる人生を謳歌してください』と。
 
 同じ環境に甘んじていると、だれもが”何らかの既成概念”という殻にはまり込んでいく。会社の殻、家の殻、年齢の殻、地域の殻などなど。
 まわりに合わせることは、イコール自分を見失うことではないはずなのに、すっかり柔軟性を失い融通がきかなくなっている自分に気がつかない。そのうち、「こんなはずじゃなかった…」という苦汁をなめることになる。
 
 「発想を変えてハツラツと生きたい」「新しいことに前向きに取り組みたい」と思っているのになかなか行動に移せない人は、心の片すみに、「今までこれでやってきたから、急に変えるのは不安」「やっぱり手放すのが惜しい」という気持ちがあるのではないだろうか。
 
 そのままにしておけば、心は老け込んでいくばかりだと思う。勇気を奮って古い殻を脱ぎ捨てなければ、若々しさは発揮できないし、発揮できなければ、生命力は減っていく一方だ。
 でも意識して、いつも心を柔らかく保つようにすれば、命尽きるときまでダイナミックに生きられる。
 
 もし、人生にふと”物足りなさ”や”あきらめ”を感じたら、自分に”頑固さ”や”なげやりなところ”を見つけたら、それは背負っている殻が老朽化して合わないというサインかもしれない。
 その殻は、より幸せに生きるのに不要な価値観であり、さっさと捨てるべきこだわりなのである。
 
 こだわりを捨てる最良の方法は、”今を楽しむ生き方”を本気で探すこと。人も自分も万物が移り変わることを素直に受け入れ、喜びをもって一日一日を生き切っていくことに尽きると思う。
「〜ねばならない」「〜であるべき」という発想をやめて、今ここにあるものをありがたく受けとめ、自分が生かされていることに感謝しよう。
 
 それができないと、過去のことやモノにこだわって、今を否定し、今の自分を愛せなくなる。すると、不安に負けて自信も希望も失い、心はすさんでいく。
 その結果、自分や世間に対する怒りを無意識に溜め込み、心は”現実逃避願望”に支配されてうつ病や認知症を誘引するのである。
 
 これからは、どこかでエビを見かけたら、エビにあやかって若返りを図ろうではないか。凝り固まった古い考えを、不平不満とともに葬り去るのだ。
 そして、職場でも家庭でも、「どうすれば同じことを喜んでできるか。どうすれば楽しく取り組めるか」ということにもっと知恵をしぼろう。
 
 日常生活に何気ない喜びを見出し、それをイキイキと積み重ねていくことこそが、幸せな人生を送る秘訣なのだから。
 
 
 
著者プロフィール
宇佐美百合子/作家・カウンセラー
 
CBCアナウンサーを経て心理カウンセラーになる。1986年読売新聞社主催「ヒューマンドキュメンタリー大賞」に『二つの心』が入選。ネット・カウンセリングの先駆者。
30冊にのぼる心の本を出版し、書籍・ホームページ・講演を通して幸せに生きるためのメッセージを発信している。
著書は、ベストセラー「元気を出して」「いつも笑顔で」(PHP研究所)、「がんばりすぎてしまう、あなたへ」(サンクチュアリ出版)をはじめ、「もう、背伸びなんてすることないよ」「こころの贅沢、見つけよう」(幻冬舎)など多数。
ホームページ http://www.iii.ne.jp/usami

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