何の因果か飲食業に足を踏み入れ、八事で店を始めて、はや８年。今はチーズの
資格を持ち、ワインとパンとチーズがテーマのレストランのマダムをしています。
まだまだ料理に関して勉強、勉強の毎日。こんな私ですが、その一部を皆さまに
ご紹介したいと思います。

　今の世界の料理とは・・・ここ最近映画にもなったスペインの「エル・ブリ」を
ご存知ですか？厨房はどこかの一流大学の研究室を思い起こさせるような設備、
試験管、真空調理、遠心分離機など。新しい料理哲学を生む、研究室となっています。
今までの常識を超えた「エル・ブリ」は料理界を一世風靡しました。最先端技術に
より、驚かせるといった手法。ところが、その「エル・ブリ」も昨年７月で
レストランを閉店。ここ最近では、過去に「エル・ブリ」が一位をとっていた、
世界の料理指標の一つ、サンペルグリーノ世界ベスト５０のレストランにおいて、
近年2年連続で世界一位に輝いた「ノーマ」がその地位に取って代わっています。
「ノーマ」はデンマーク・コペンハーゲンの海沿いにひっそりたたずむレストラン
です。今は、ここに世界各国からのグルメや超一流の料理人が集います。彼は
「エル・ブリ」の卒業生。その最先端の調理技術を勉強した上で、地元の食材を
使った新しい料理を作っています。世界の注目料理は、もはや、イタリアン、
フレンチといった枠組みを超えてしまっているのです。

Think globally act locally

　世界の注目する彼らは昔のように故郷を捨てフランスやニューヨークで名を馳せる
というやり方ではなく、世界の頂点で身につけた技術を自身の地元で表現しています。
作り手の創造性を一緒に体験するという世界観に突入しているのです。だからこそ、
つくり手のオリジナリティが重要視され、地元で活動する事に意味があるのでしょう。

　そして、その先にあるのはきっと、ネオ　クラシック＝温故知新　　古き良い時代の
料理を今の時代に・・・なんじゃないかなあ、と私は思っています。エンターテイ
メント的な驚きだけでもなく、ローファットなダイエット食というだけでもなく、
人を「元気にさせる」料理への回帰ではないかと。

　フランス革命後に誕生した「レストラン」。この「レストラン」とは「回復させる
ところ、元気になるところ」といった意味があるのだそうです。料理の歴史を振り
返ると素晴らしい偉大な料理人がたくさんいます。アントナン・カレームヤやエスコ
フィエ、タイユヴァンにアピキウス、いずれも歴史に名を残す偉大な巨匠です。彼らの
生み出した料理哲学やレシピは今の時代にも全く引けを取りません。

　そして、また、同じ時代に活躍した美食家のブリア・サヴァラン＊は言っています。
「チーズのないデザートは片目のない美女」。チーズはもちろんワインもパンも発酵
食品。今、まさに注目の食品。食文化の歴史が私たちの時代の元気にも発酵食品が
有効であると教えてくれていると思います。

　これから私も世界で何が起きているのかを勉強しつつ、自分たちのオリジナリティは
何なのか？を自身に問いかけ、チーズの魅力をお料理とワインとパンと組み合わせ
ながら、より多くの人に伝えていきたいと考えています。
　まずはこの母校南山のお膝元？！八事でする意味とワインとチーズの知識をしっかり
活かせるようなお店創りを心がけたいと思っています。

　　　　　＊ブリア・サヴァラン・・18?19世紀のフランス激動時代の法律家。
　　　　　　　　　　　　　　　　　美食家として知られ、著書「美味礼讃」はつとに
　　　　　　　　　　　　　　　　　有名。

神倉明子　CPA認定　チーズプロフェッショナル

　１９７４年　名古屋生まれ
　１９９３年　南山高校女子部卒
　１９９７年　明治大学卒業

　２０００年　フランス　リッツ・エスコフィエ　ディプロマ取得
　２００３年　ブーランジェリーブルゴーニュ開店
　２００４年　名古屋三越に出店（?２００６年）
　２００４年　チーズプロフェッショナル取得
　２００７年　ディーン＆デルーカ名古屋店に出店
　２０１０年　レストラン「ブラッセリーブルゴーニュ」開店
現在に至る。

◆セミナー＆企画
　２００４年から　ブーランジェリーブルゴーニュにて
　　　　　　　　「フロマージュ（チーズ）セミナー」開設。
　　　　　　　　パンとワインとチーズのマリアージュの楽しみ方や、
　　　　　　　　ヨーロッパ食文化の講座。
　２００６年から　フランス料理教室ラ・ココットにてチーズ教室講師（２００８年まで）
　２００７年から　専門学校にて栄養学講師（年間3週間程度）
　（２０１０年まで）
　　　　　　　　住宅メーカー主催　食のセミナー講師
　　　　　　　　インテリア産業協会　研修セミナー講師
　２００９年から　ブーランジェリーブルゴーニュにて
　　　　　　　　・パン教室を開催。
　　　　　　　　・「ブリア・サヴァランの美味学について」セミナー開設。
　　　　　　　　　18?19世紀のフランス激動時代の法律家、ブリアサヴァラン。
　　　　　　　　　食通で知られており、食事を学問として扱いその楽しみに
　　　　　　　　　ついて述べられた著書「美味礼讃」を読みとく講座。
　２０１１年から　ブラッセリーブルゴーニュにて
　　　　　　　　・「チーズとワインとお料理のマリアージュ」セミナー開設

　＊ブーランジェリーブルゴーニュは、現在閉店し
　　　引き続き、レストラン「ブラッセリーブルゴーニュ」にて
　　　ブリア・サヴァランのセミナーなども続けている。