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2014年6月27日

vol. 91 加藤 仁美(G30)「LIFE」

いつも笑っていますか?
ちゃんと泣いていますか?
楽しく生きていますか?
 
 学生時代から成績が悪く、先生方にはとてもご迷惑をかけ、何かの実績を出したわけでもない
私に突然のコラム依頼でとても困惑しております。
 依頼の理由は少し変わった私の趣味です。
 モータースポーツというと驚くような響きですが、ただ単にミニサーキットへ出向き、自分の
たたき出すタイムをコンマ1秒でも縮めようとひたすら丁寧な操作を心掛けてコースを走る。
たったそれだけです。
 
 3年前に私の使用していた車が壊れ、車好きの主人が私に買い与えたのが当時売り出し中だった
インプレッサセダンでした。
 2匹の犬を乗せて買い物するには少々贅沢な2500ccターボのオートマチック車。
魅力的な車を買ったからという軽い気持ちで富士スピードウェイでの走行会に参加し、私は見学し
主人が走りましたが、彼はその楽しさが忘れられずその後は手軽に行ける近場のミニサーキット
通いとなりました。
 普通ならばこの先は個々の趣味となり別行動になるのが一般的ですが、何よりも好奇心が勝る
私はとりあえず同行。危ないからというありきたりの理由で批判はできません。できることは
何でも自分の目で見て聞いて確かめる。
 
 まずサーキットで驚いたことは、ほとんどの方が自家用車、我が家の車もそうですが見た目も
普通。とても気軽に楽しめるということです。
 身を守るための専用シートベルトやヘルメット、そしてブレーキさえきっちりしておけば怪我を
するような危険はなさそうです。
 見ているとどんどん引き込まれます。毎回少しずつタイムが縮まったり、気候・路面・メンタル
面でそのタイムが左右される。
 
 日々生活をしていて1秒という時間がこんなに長いと思ったことは生まれて初めてでした。
そう感じた瞬間、私もその時間を体感したい!気付けば私もヘルメットを被りハンドルを握って
いました。
 
 サーキットでは対向車がいない、人が飛び出すこともない、ある意味公道よりもずっと安全なの
かもしれません。ただひたすら自分との戦いです。
 唯一主人と似ている性格は1つのことに夢中になるということ。
 毎日コンマ1秒を削るための策について会話が繰り広げられ、それは車のセッティング
だったり、操作やライン取りだったりといろいろありますが、策の目処が立つと次の日程を
計画します。
 もちろんお金や時間を注ぎ込めばそれなりの結果は出るものですが、実は結果というのは
注いだ分ほどは大きく出ません。そしてどんなことでもある程度の限界というものが来ます。
 そこでサーキットで走り始めてからちょうど1年半くらい経った頃、肉体的・経済的なことを
考慮して、お互いに目標タイムを設定しました。
 目標値を設定して3ヶ月間ほど頑張った末にやっと目標タイムを達成することができました。
 この達成感とともに一区切りをつけるためサーキット通いに終止符が打たれました。
 
 あくまでも趣味なので、何でも楽しいところで止めておく。
 主人のあっさりした性格のおかげで、引き際がいかに大切なのかを知りました。
 
 とても不思議なことですが、その後3ヶ月ほど経った絶妙なタイミングで、友人にオートバイの
試乗会に誘われました。
 30年ぶりに乗るオートバイはとても新鮮で、ここでまた沸々と冒険心に火が付きあっという
間に家の中には6台のオートバイが揃ってしまいました。
 数人の友人を巻き込み、現在はその友人たちとのんびり走り、風を感じる休日を過ごして
います。
 
 今のところ女性は私1人なので、走るときはいつも列の真ん中です。
 走っている間の会話はほとんどありませんが、前を走る仲間たちの背中とバックミラーに写る
仲間達からは、ひしひしと私を気遣うオーラが漂い、このなんとも言えない空気感がたまらなく
心地良い。
 これはきっと乗っている者だけが味わえる秘密の快感。
 仲間ももちろん自分自身も傷つくことなく、快適に楽しく走ることを信条とし、自然を感じこの
不思議な優しい時間を過ごしていきたいと思っています。
 
 まさか人生が折返しを過ぎてこういうことしている自分にとても驚いています。
 考えてもみなかった人生ですが、これが今の私の人生です。
 
 何をするにも年齢とともに壁は厚く高くなりますが、きっと乗り越える方法があるはずです。
道具を使うとか、助けてもらうとか、回り道を探すとか、いっそのこと壁に穴を開けてしまう
とか、この情報社会のおかげできっと方法は見付かるはずです。
 そうやって模索することも楽しみにしてみてはいかがでしょうか?
 
 目を向けて、手を伸ばすだけ、一歩足を前に出すだけ、私にはたったそれだけで、泣いて笑って
楽しい時間がそこに待っていました。
 その小さな勇気の力を信じて、残りの人生をもう少し頑張っていくつもりです。
 
 
加藤仁美 G30
プロフィール
名古屋医健スポーツ専門学校鍼灸科 在学中
3年後の国家試験合格のために猛勉強中。

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