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2014年8月24日

vol. 93 小口 恭子(G31)「将来の夢」

 小学校3年生の時に突然、父の仕事の都合で2年間の渡米が決まった。最初は子どもの
学校の問題があるので、父のみで行く予定だったが、母は同じ経験をしたいと、
1ヶ月後には子供3人を連れて渡米した。わたし達兄弟は言葉が通じないまま、他に
日本人がいないペンシルベニア州ランキャスターの地元の学校に通った。
 
 わたし達子どもはアメリカに在住している間は持って行った教科書は一度も開く
ことがなく、学校からの帰宅後は日本人が珍しかったのか、クラスメイトの家に誘わ
れること、また、わたしの家にも遊びに来ることが当たり前のようになっていた。
担任の先生が授業を止めて、クラスメイト全員を連れてうちに来たこともあった。
父は子ども達の学校の遅れを案じ、2年の滞在を1年に減らしてもらったが、父が案じて
いた通り、帰国後の4年生の通知表の成績は3と4しかなかった。
 
 しかし、5年生になった時、将来は通訳になれたら、とぼんやりと思い、英語に力を
入れている南山の受験を考えた。その際、バスケットボールと書道のみ続けることに
して、中学の受験を機に他のお稽古は全て辞めた。
 
 しかし、近所の進学塾に行ったところ、「4年生の成績が3と4の子を南山に入れる
のは無理」と断られた。母はアメリカ滞在中に放置したことを悪いと思ったのか、
家庭教師を付け、南山の女子部も今程難しくなかったのと、根性で(笑)無事合格。
その後は燃え尽き症候群で、茶華道、箏、三味線、乗馬の趣味を楽しみ、勉強は
あまりしなかった。
 
 しかし、大学の進学は好きな英語をやりたいと思い、高校3年生の時は文系のクラス
に入ったが、読書量が圧倒的に少なく、文学的センスがないことにすぐに気付き、
断念。数学と化学は比較的得意だったので、曽祖父、祖父は医師だったが、父が
夜中の急患を避けるため歯科医になったことを聞いていたので、わたしも歯科医に
なると決め、理系に変更した。しかし、優柔不断なわたしはまたしても心変わりが
起き、直ぐに獣医学科志望に変更した。獣医学科は中部地方には国立の岐阜大学しか
なく、わたしにはハードルが高かった。担任の渡辺くみ先生には心配とご迷惑を掛けて
しまった。結構勉強したつもりだったが、国語と社会が酷く苦手なわたしは、一浪
しても岐阜大学には断られ、娘を近くに置いておきたいと思っていた両親も諦め、
神奈川にある麻布大学獣医学部を選択した。
 
 卒業後は名古屋市内と奈良県内の動物病院で代診をし、縁ができ、三重県の志摩市で
動物病院を開業した。
 
 母は子どもの教育に関心はなかったが、わたしの小学校入学時より、マクロビオ
ティック、自然食に興味があった影響で、 わたしも維持食、処方食、サプリメントを
中心とした治療法を選ぶようになり、2007年にはサプリメントを用いた診療についての
本を書くことが出来た。そのサプリメントを愛用している人が多く、バーコードも
付けていない自費出版だったが、重刷を繰り返し、1万冊以上が売れた。周りに
煽てられ、調子に乗ったわたしは、その本を、一昨年は英語、昨年は中国語にした。
その間にそのサプリメントは世界150カ国以上で購入が可能になった。
 
 今は診療を趣味にして、犬猫のみならず、人間の健康セミナーを日本の各地で
やるようになった。最近は中国語にもチャレンジして、いつか海外で通訳なしの
セミナーが出来たらと思う。そして、拙著が他の国で翻訳され、沢山の犬猫と人間の
健康に携わることが出来たら、と思っている。憧れの同時通訳にはなれなかったが、
獣医師を選んだことは良かったと思う。また、南山で過ごせた6年間と大学で6年間
(獣医学科は6年一貫教育)を一緒に過ごせた仲間は、南山時代同様、わたしにとって
「心のオアシス」、そして仲間の活躍は「心のサプリメント」である。
 
*********
 
小口恭子 プロフィール
 
麻布大学獣医学部獣医学科卒業
名古屋市内と奈良県内の動物病院で臨床を学ぶ
1999年 三重県志摩市にて「K’s犬猫クリニック」を開業
2005年 「はな犬猫医院」に院名を変更 現在に至る
 
予防医学を提唱していた父の影響と
身近にサプリメントがある環境育ちのため
予防獣医学/代替療法に興味をもち
開業以来、犬猫の治療にとりいれている
 
著書『うさぎが逃げた!?』ある獣医師の診療日記 2007年初版アチーブメント出版
英語版 ?The Rabbits Ran Away!?” Veterinarian’s Medical Diary 2012年中央印刷
中国語版 『兔子 逃走了!? 』 一位獣醫師的診療日誌 2013年中央印刷

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