vol. 147 津川 園子(G16)「あっという間のドイツ生活30年 ~ドイツの奥入瀬み~つけた~(前半)」 – Nanzan Tokiwakai Web
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2020年1月26日

vol. 147 津川 園子(G16)「あっという間のドイツ生活30年 ~ドイツの奥入瀬み~つけた~(前半)」

ドイツ真ん中の西端にあるデュッセルドルフ近郊に住んで30年になる。
ちょうど東西の壁が崩れた年に、夫の転勤で小学3年生と幼稚園児の息子たち、家族4人でデュッセルドルフから近郊列車で15分の小さな町(人口約5万人)に住むことになった。デュッセルドルフの人口は64万人。ドイツで7番目に大きな都市で日本人も約5000人住んでいるが、天邪鬼な我々は敢えて日本人のいない場所を選んだ。

母親の一存で現地校に放り込まれた息子たちは、週一回の日本語補修教室に通いながら、一にも二にも自主性と自己主張が求められ、外国人であってもドイツ人と同等、公平にしか扱われない厳しい環境の中で揉まれ闘いながら11年~13年後にドイツの高校を卒業した。息子一人くらいは、授業料が無料のドイツの大学に行ってくれればという親の淡い期待を裏切って、二人ともさっさと日本に帰国してしまった。

息子たちがドイツを去ってかれこれ17年が経つ。今や二人とも社会人になり家庭を築いて日本に住んでいる。
私共夫婦も70台に突入し、この頃は過去の仕事の縁でたまに声がかかるとアルバイトをしているが、もはやドイツにいなければならない理由はない。
家族は全て帰国し、私の96歳の母は日本で今も独り住まいをしており、ここ3年私は三ヶ月置きに日本とドイツを行き来している。それなのにどうして日本に帰らないのか?家族や親せきのみならず、いつまでもドイツにしがみ付いている私どもを奇異の目でみるドイツや日本の友人が増えてきたのも不思議ではないだろう。

では、一体なぜ、私たち夫婦は日本に戻らないのか?
先ず、思い当たるのは、我が家から歩いて10分のところに、ネアンデルタールという広大な森があるから?
ここは旧石器時代に原始人類ネアンデルタール人が住んでいたところ。
深い自然林に覆われているこの地域は東西7km程に伸びていて(東京ドームの48個分の)自然保護地域になっている。
起伏のある丘陵地帯に森林あり、谷あり、草原や牧草地それに畑が広がっていて、まことに変化に富んでいる。森林の中に小さな渓谷がありデュッセル川がちょろちょろ 流れている。新緑のころ、この谷川のせせらぎと鳥の鳴き声に耳を澄ませながら歩いているとここはまるで「ドイツの奥入瀬」!そう言いふらしたい気持ちで一杯になるが「奥入瀬渓流」とはやはり比ぶべくもなく、せめて「ワイルドなミニ奥入瀬」と言わせてもらおう。
森林の中はさまざまな樹木がそびえ、森の小径の他は、どこもかしこも低木や野草が生い茂っていて、足を踏み入れることはできない。
新緑の春や、森の木立が鬱蒼と茂る夏は木漏れ日が射しこむと樹木の葉がきらきらと輝き、森の中が緑のレースのカーテンに包まれる。余りの神々しい景色は息をのむ美しさだ。
冬、雪が積もると、辺り一面銀世界に変身し、土地の勾配をいかして、ソリやスキーを楽しむこともできる。
丘陵の上には大きく開けた草原、牧草地や畑が広がっている。
広々とした高原の牧草地には毛むくじゃらの原生牛(ヨーロッパバイソン)が放牧されていて、開けた草地や草原には馬、羊などが草を食んでいる。水車小屋や農家が数件、そして畑もある。春、畑は見渡す限り菜の花でうめつくされ、まばゆいばかりの黄色が目の飛び込んでくる。その美しさといったら、思わず跳び上がって叫びたくなる。

12kmや5km そして3.5kmのハイキング1周コースがあり、散策道は無数にある。四季折々ハイキングのみならず、ウオーキングやランニング、そしてサイクリングも楽しめる。

このネアンデルタールの森の他に、車を5分走らせるともう一つの大きな森がある。
こちらの森は広葉樹林の森で広さはネアンデルタールの倍。こちらは起伏がなく全域ほぼ平らなので、散歩にうってつけ。
ドイツに住み始めて数年後、ドイツの知り合いに勧められて始めたグループランニングは今も続け、私は週3回森の中を1時間かけてみなとおしゃべりしながら
ゆっくり8㎞走を楽しんでいる。ところが、私より1年遅く、いやいやながら始めた夫はすぐランニングの虜になり、二つの森の中を駆け巡りトレーニングに励み、各地の大会に出場している。
この二つの森は我々の生活に欠かせないものとなっている。この森こそ、我々がドイツに居続けている第一の理由であることは間違いない。

では、他の理由は何か?
ドイツは生活がしやすく、居心地がよい?
日本ではなにかと近所の人たちにも気を遣うことが多いが、こちらの近所づきあいは至ってゆるやかで気楽である。隣近所とは特別親しくしているわけではないが、互いに自然体で接し、自由に行動し、オープンに物が言える間柄だ。旅行などで長期留守をするときは、互いに相手の家の雨戸の開け閉めや、郵便物の取り入れ、植物の水やりを引き受ける。

ドイツ人は何事も直接本人にはっきり物を言うので、おせっかいだと思うこともある。

例えば、我が家の玄関のドアには鍵を一つしか取り付けていない。近所の一人が泥棒除けに「二つ目の鍵を付けた方がいい」としきりに勧めてくれたことがある。しかし、我々は必要ないという考えで、その人のアドバイスを聞き入れなかった。それでも相手は「自分の言いたいことは良かれと思って言った」とそれで,後腐れもなくその件は一件落着。
また、隣の家族に我どもの家族の動画を見せたことがある。何かの折にそのことを知った一件先のお隣さんから「私たちも見たいのに、どうして見せてくれないの?」と面と向かって言われたときはドキッとした。見せたら、とても喜んでコメントや質問もたくさんしてくれた。
(つづく)

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プロフィール 津川 園子さん(G16)
南山大学文学部独文科卒業
30年前からドイツ、デュッセルドルフ近郊に在住

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